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私怨の復讐13
「さあ、処刑の時間だ!」
樹が去って直ぐ、信弥は叫ぶ。
両手をパンと合わせると、大量の岩の槍を出す。
それは朝に見た量の倍以上だ。
「ギャラリーも、逃げないと死ぬぜ!」
刑務官や丁度通りかかった受刑者に再び叫んだ。
大量の岩の槍を見た受刑者は腰を抜かしたり立ち尽くしたり、逃げようとする者は刑務官がひき止めている。
彼等をちゃんと牢屋に入れなければならないからだ。
「歩きなさい」
刑務官はそうして受刑者を歩かせた。
見張りの者達は防御の呪文を唱え始める。
多大な被害を出さない為だ。
「ふぅん、まあいいや」
それらを信弥が気にする事は無かった。
「死ね」
それだけ言うと、手を振り下ろす。
すると、岩の槍は直人に向けて振り注いだ。
「死んだか」
しかし、土煙が去るとそれは違うと解る。
その場には何も無い。
直人は信希に助けられていたのだ。
それは、信弥が戯れに兄と手合わせしていた時の魔法だった。