198/228
私怨の復讐11
試合は平等に、樹は刑務官に指示を出し料理を運ばせる。
「昼食だ」
松田兄弟に声をかけると、意外とあっさり手を止める。
本当に遊びの様だ。
「敵に食事やっていいのかよ」
「試合に不公平は許されない。勿論罪人に食事を振る舞わないのもだ」
樹はあっさりと言った。
だからといって、松田信弥に見張りが外される訳でも無い。
「あんた、結構呑気なのか?」
椅子に座った信弥が言う。
普通、犯罪者に食事を呑気に振る舞わない。
自分なら、紐で縛って目の前で食べるだろう。
それに、ここに留まり続けても時間の無駄だ。
まあ、信弥がやっているのが樹を留める為の時間稼ぎなのだから仕方がないのだが。
「魔法省をなめない方がいい」
樹はそう言っただけだった。
それぞれ食事をする。
まともに訓練しても付け焼き刃では敵わないというのに、律儀に訓練して馬鹿みたいだ。
それでも、まあ手加減すれば遊ぶ位のレベルにはなるか。
「もう少し遊んでやるよ」
信弥はニヤリと口を歪めた。




