193/228
私怨の復讐6
「さて」
信弥は信希を見る。
それを訝しげに見ると、弟は悪い笑みを浮かべた。
「兄貴、遊んでくれよ」
その言葉は仲の良い兄弟に向けて言うものとは程遠い感情。
どちらかと言うと、いじめっこが対象に言うものが近い。
「信弥…」
「さっき邪魔したんだ。それくらいの覚悟はあるよなあ!」
叫んだとたんに手を上げ空中に岩の槍を多数出す。
「死ね!」
先手必勝、手を振り下ろすとそれは信希に向かい降り注いだ。
集中攻撃である。
信希は咄嗟に後ろに滑った。
転んだのではない。足を地面に付けたまま、動く歩道の様に動かずに下がったのだ。
「ほーっ、じゃあこうするか!」
手を地面に付く。
先程直人に放ったものを再び使用した。
地面から岩の槍がハイペースで一直線にどんどん出現する。
「兄貴、逃げろよ!」
それは追尾する様に信希を追った。
本当に時間潰しなのだろう。
一辺倒に、途切れずずっと同じ攻撃。
信希はずっと逃げるしかなかった。
「逃げないと死ぬぞ!」
信弥は楽しそうに、笑いながら言った。




