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私怨の復讐5
「見てるだけなら放っといてやろうと思ったのに、死にたいの?」
じとりと信弥は兄を見る。
「信弥、やめろ!」
「は、馬鹿?」
寝言は寝て言えとばかりに呆れた。
その間も直人は尚、炎を巨大化させている。
「先輩、どうしたら」
直人は困り顔だ。
どうやら作ったのはいいが放てないらしい。
それでも手は出さない。
「そっちも馬鹿か…何で練習してないんだよ」
頭をガシガシ掻く。
「おい、時間をやる。そいつに戦闘方法教えろ」
信弥は樹に言い放った。
どっちにしろ、樹を向かわせるには時間がまだある。
その間直人を殺せない。
本当は死んでも痛めつけるつもりだったんだが、暫くは出来ない。
なら、妨害者を相手して時間を潰せばいい。
「これは中断だ。後で再開するんだから俺に手を出すなよ」
信弥は念のため釘を指した。
樹は「いいだろう」と了承すると、樹に歩み寄る。
「上に放て」
「どうやって」
直人は泣きそうだ。
溜息をつくと、手を上に向けさせる。
すると、樹は炎の玉にデコピンしたのだ。
上空に花火の様に上がり、樹がパチンと指を鳴らすと爆発したのだった。




