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魔法省魔法書管理部魔法古書管理室4
「君、うちの部署に見学だったの?」
青年は後ろからそう言ってきた。
樹は自らの部署に帰ってきただけなのにひどい言い種だ。
「あんた、誰だ?」
樹は振り向く。
だが、お互い初対面なので、仕方がなかった。
「樹、お帰り。和田君、おはよう」
現れたのは室長、阿川幸成だった。
阿川幸成は葉月の元旦那でもある。
「おはようございます!」
和田は元気よく挨拶を返した。
「おはよう、和田君。甲斐は挨拶をしてくれないのかい?」
「おはよう…ございます」
仕方無く渋々樹は言ったのだった。
それにしても、この場所は変わらない。
地上は明るい建物なのに、管理室は薄暗い。
幸成曰く、明るいのが苦手でワントーン落としているのだそうだ。
「それはそうと、二人は初対面だったね」
何事も無い様に幸成は言う。
「…彼は見学では?」
和田は、勘違いしたままだった。
幸成は首を横に振ると、勘違いを正す。
「彼、甲斐樹は君の先輩だよ」
そして、幸成は更に続ける。
「甲斐、彼は和田直人君。君の後輩でパートナーだ」
その言葉に驚いたのは、樹だけではなかった。