私怨の復讐2
「お前、何をやった!」
「何って、見ればわかるだろう?」
信弥は笑う。
無かった筈の傷が、急に現れる。
監視員一人を人質に、他の監視員を牽制する。
外側に逃げた雑魚は、きっと掻き乱してくれるだろう。
「魔法省を呼べ、古書管轄の奴だ。いるだろう?和田直人が」
監視員はざわつく。
数日おとなしくしていた男は、悪人だった。
数人が去る。
後は現状維持だ。
いずれ来るだろう、目的の奴が。
忘れない、この傷を負わせた男を。
皮膚移植で治せるが、信弥は業と治さなかった。
そうして、やがてやって来る。
「信弥、何をしてるんだ!」
松田信希、信弥の兄が呼ばれていた。
よくある、家族に説得させる奴だ。
「久しぶり、兄さん」
監視員はそのままに、信弥は兄に言う。
本当に久しぶりだ。
行方を眩ましてから数年、本当に。
「要望通り、和田直人を呼んだ!」
魔法省の者が叫んだ。
そこには何故呼ばれたか解らないスーツの青年と、斜め後ろに少年が立っている。
「久しぶりだな」
「えっと…」
直人は戸惑う。
「覚えてないのか?こっちは一日たりとも忘れていないというのに」
魔法省が樹に資料を渡す。
それを見ると、一瞬目を見開いた。
「これを」
樹は直人に資料を見せた。
「えっ、あのときの!」
直人は資料を見ると、驚く。
「すまなかった!君に大怪我をさせるつもりは無かったんだ!魔法素人で出るだけでいいって!結果怪我させてしまった!ごめんなさい!」
直人は頭を下げた。
「ごめんで済むなら警察は要らないよなあ」
信弥は言う。
その表情に信希は不安になる。
「信弥?」
「お前、もうコントロール出来るんだろう?まだ魔法使えないなんて言わないよなあ?魔法省さん」
信弥はニヤリと口の端を上げた。