作られた記憶9
「お父さん」
幼少の記憶。
親子二人で休日に出掛けた冬子は、手を繋いで楽しそうに父と笑いあっていた。
玩具屋や本屋へ行き、色々と買って貰う。
お菓子屋や百円ショップにも行き買ってもらいつつ、お使いのものも買う。
大きな町なので、色々なお店があって楽しい。
少し遅めの昼食を食べ、次はどこ行こう等と話す。
大きな公園に休憩がてら向かう事を決め、レストランを出る。
ドンッ!
「すみません」
男性がぶつかり誤りそそくさと去る。
街中、公園に向かう途中。
人通りも多い中であった。
「うっ!」
「お父さん?」
繋いだ手が離される。
大手商社の普通のサラリーマン。それが何故こんなことになるのだろう。
「とう、こ…離れ…」
頭を押さえながら父は言う。
跪き、頭を押さえていない方の手が地面に付く。
ミシミシ、と音がする。
「おとう、さ?」
一歩、二歩と後ずさる。
歩行者は異変に気付き、騒ぎ始める。
突然、道路は父を中心に割れた。
逃げ惑い、遅れた人は数人落ちる。
それは、中心に居た父やその側に居た冬子も例外ではない。
その時だ。
ザザッと歪む。
落ちてゆく自分と父、同時に誰かに受け止められ助かる自分と父。
重症の自分と魔法省に殺される父、助かった自分と逮捕される父。
二つの記憶が混ざっていた。
そこではっと目が覚める。
それは気を失ってから随分と後の事だった。