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作られた記憶4
「バレてるかな?」
「さぁな」
不確定要素が多すぎる。
そもそも、彼女が三人に負魔石を渡したというだけなのだ。
「それでも、捕まえれば何かわかるだろ」
「そうだね」
近くまで来ると、無言になる。
足音を立てず、そろっと屋上のドアを少しだけ開けた。
女子生徒は屋上から空を、地上を見ていた。
「いらっしゃい」
振り向くと、彼女は言った。
二人がドアを開けると、彼女は微笑む。
「それ…」
翔は彼女の右手を指す。
「あぁこれは負魔石。この方が使いやすいのよ」
「あんた…」
「三年須田冬子、私の名前」
「須田先輩、何でこんな…」
翔の問いに、冬子は微笑む。
「そうね、魔法省への仕返し。この学園の大半は悪くないわ。だから、その犠牲になって頂戴」
そう言うと、右腕を何かをばら蒔く様に横に振った。
「霧、結城!」
霧は直ぐに濃くなる。
外だというのにだ。
「ごめん、捕らえ損ねた!」
条治は舌打ちをする。
「もっと混乱させないと」
フフフと笑い声だけが聞こえる。
「どこだ、どこに…」
影が見えた。