学園都市の混乱9
自慢のマウンテンバイクが故障した。
巷でよくある故障、パンクだ。
「あー、歩いていくしかないか」
行き先は転校先、荷物はもう送ってあり最小限だ。
親は海外を悠々自適に飛び回り、俺は母方の祖父母の引っ越しに付いて転々としている。
そして今回、学園の寮に入る事で型が付いた。
別に祖父母が嫌いな訳では無い。
ただ、やはり転校ばかりでは良くないとなったのだ。
「颯君、ここはどうかしら?」
祖母のツテらしい学校らしい、全寮制の学校。
母の友人がそこの関係者らしく、転入試験を受けられるらしい。
「書類は私たちが用意するわ、今週末に試験を受けに行きましょう」
祖母は優しく言う。
その試験結果は合格、引っ越しに合わせて転入する事となった。
それが、途中でパンクするとは。
どこかで修理してもらわなければいけない。
「はぁ、ついてない」
マウンテンバイクを押しながら探す。
「どうか治らないかな…」
ぼやきながら歩き、修理屋にたどり着いた。
「パンクしてませんよ?それどころか新品みたいに綺麗です」
修理屋のおじさんは言う。
「あれ?空気無いですよね?」
「確かに空気は入ってませんでしたが、気泡は出ませんでしたし…」
おじさんは困りながらチューブをタイヤに戻し空気を入れる。
「触って下さい」
言われた通りタイヤを触る。
確かに空気は減らない。
「修理は必要なかったから、点検費五百円ね」
もう片方のタイヤにも空気を入れ、おじさんは笑顔で言う。
五百円を払うと、再び自転車に乗る。
確かに、パンクはしていなかった。