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ばら蒔かれた負魔石9
「何よ、これ!」
理子は頭を抱えて蹲る。
部屋で目を瞑っているのに、この学園都市が見えるのだ。
それは、色々な場所をひっきりなしに映す。
「どうしたら、誰か助けて!」
その叫びは、誰にも届かない。
その時、男子寮が映る。
男子寮では、四人が寮から脱出する所だった。
だが、直ぐに切り替わる。
「侑斗、高坂君、助けて…」
「理子!」
その直後、声がした。
風魔法を使い、理子の部屋の前へと飛んだのだ。
理子の部屋の場所は知っている。
更に、貴史が部屋へ飛び移った。
「これ貰うよ」
イヤリングの片方を自らの耳に付けると、近くにあった消しゴムを手に取る。
「暫く眠れ」
そう言うと、消しゴムで肩をポンと叩いた。
理子は眠る。
その時だ、一人の少女が理子の部屋に入って来た。
片手には火を灯し、二人を見る。
「森田?」
彼女は森田優子。一年の時同じクラスだった。
炎は長く伸び、それを二人に向けて伸ばす。
「クソッ!」
咄嗟に投げた消しゴムは炎で焼け落ち、彼女に届かない。
貴史は理子を抱えると、ベランダに出た。
「飛んで!」
既に下りていた侑斗は叫ぶ。
逃げ道がない故、決死の覚悟で飛び降りた。