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魔法省魔法書管理部魔法古書管理室1
真夜中、樹は自らの部屋で机に向かっていた。
勉強なんて二十年ぶりだ、忘れている事も多い。
普通の学生の様に勉強をする。
普通の着信音、携帯を見ると阿川幸成と出ていた。
「久しぶりだね、甲斐」
ほぼ毎日会っていただけに、確かに数日でも久しぶりなのだろう。
阿川幸成は上司、室長だ。
樹は明らかに嫌そうな顔をした。
「何ですか?」
「勿論、仕事だ。まさか他の仕事を放っておくつもりじゃ無いだろうね」
阿川幸成の言葉に虚を付かれる。
確かに、詳しい話しはしていない。
だからといって、解決するまで他の仕事は無理だろうと考えていた。
「は?今回の潜入の間はそうなのでは?」
「やっぱりか…明日、此方に来るように。いいね」
阿川幸成はそう言うと一方的に電話を切った。
樹はため息をつく。
此方の監視しながら学校生活も何かと大変なのに通常業務までやるとなると気が重い。
だが全ては上司の命令だ、仕方無い。
何だかんだ樹は諦めが多くなっていた。