水の魔法使い達1
「あー、これは魔法省案件だな」
応援消防士は火を消しながら一人愚痴る。
大きな山火事、しかしその火は全く消える様子が無い。
更に、自らが魔力を感知できる程高い魔力故に解ってしまった。
他の消防士達は消える事の無い火を必死に消そうと頑張るが、それは無駄と云うものだ。
「ちょっと代わって」
同じく応援の後輩にホースを渡す。
「緊急要請お願いします」
応援消防士は、スマホで魔法省に直接かける。
上に掛け合ってもいいが、それだと時間がかかる故めんどくさいから省略したのだった。
「はい、わかりました。それではこちらから数名派遣します」
コールセンターに掛けられた電話は緊急性に気付いたのか、すぐに対応してくれると言った。
おそらく、テレビの大々的な放送も手伝ったのだろう。
それから直ぐ、現場が慌ただしくなる。
上から指示があったらしい。
しかし、そんな事はお構い無しに水をかけまくる。
「山田、山田倫人は居るか!」
指揮官が叫ぶ。
「ノリ先輩、呼んでますよ?」
後輩は後ろから声をかける。
正直めんどくさいから無視っていたのだが、後輩に言われたらしょうがない。
「はいはい」
後輩に再び任せ、指揮官の所へ向かった。
「山田倫人です」
「上からのお呼びだ、電話に出ろ!」
指揮官は通信機を渡すと、指示へ戻る。
恐らく、彼は何も知らないのだろう。
その後、倫人は説教される。
魔法が解る事と、コールセンターに電話した事だ。
名前を聞かれ名乗らざる得なかった故仕方無いとはいえ、めんどくさい。
しかし、魔法の事を知る人間が少ない故に今回は巻き込まれざる得なかった。
そう、消防士代表として魔法省との仲介者に任命されてしまったのだった。




