ウィッチクラフトアクシデント8
歌は途切れる事なく続く。
四ッ谷葵の歌は、人々を狂わせていた。
後ろに控える一色真琴は、何をしているかはわからない。
だが、延々と魔力は使われている。
佐渡高校の生徒達全員が、補欠の彼らも含め騒乱に関わっている。
二人の捕縛を阻む者はもう居ない。
だが傷つけずに捕まえる為、大技は使えない。
だから、樹は二人の方へ突進した。
その時、魔力壁が阻む。
強大ではなく樹が簡単に崩せるものではあるが、突然それは現れた。
一色真琴の片手は、それを作る為に前に出ていた。
出入り口を塞いでいたのは彼だとも、その時わかる。
魔力壁を触り、距離を確かめる。
「薄いな…」
樹はそれだけ呟くと、拳を握り魔力を貯める。
それが魔力壁に当たると、ガラスが割れる様に砕けた。
咄嗟に一色真琴は蔓で捕縛を試みる。
彼の役割りは、四ッ谷葵の護衛でもあった。
だがそんなもの、樹には無意味の産物である。
光速で避けつつ、先ずは一色真琴を捕縛する。
右手が彼の身体に触ると、途端に眠った。
これで後は一人である。
しかし、それは不要であった。
突然歌が途切れ、倒れたのである。
その途端、制御不能の観客や警備員は倒れる。
操られていない者達は、突然の事に驚いていた。
佐渡高校生徒達を操っていた者は、何故か突然止めたのだ。
樹は辺りを見回す。
対角線上、そこには水と三人の不振人物が居た。
だが、彼らは樹が見た事に気付くと消えた。
樹、またねという水のテレパスだけを残して…。
その後、対応に明け暮れる魔法省職員達が居たのは言うまでも無い。