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魔法省訓練10

「何だよ!」

倒され縛られ、翔は散々だった。

その上放置である。

自力で抜けられたらって、魔法省の人間に敵う筈が無い。

自力で体を動かす。

これは魔法関係無くやる事だ。

「魔法でって…」

無理に決まってる。

「あいつ、見てろよ…」

黒い感情は、翔の魔力を上げる。

幸い、直澄がこの場に居ない事で拘束力は薄くなっていた。

〈助けてあげる〉

それは心に響く。

せめて影の縄だけでもと手首に集中させると、漸くそのお陰で手は解放された。

そのまま影に手をつく。

魔力が上がったお陰であっさりと支配は解ける。

その調子で足も解いた。

「何だったんだ…」

記憶では忘れても、奥底に追いやったもう一人の自分は完全に消えていた訳では無かった。

それでも一瞬で、翔には何が起きたかわからなかった。

「やっと解けたか」

手が解放されたことで、直澄はやって来ていた。

「良かったな、まだ残っていて」

翔には直澄の言葉の意味がわからない。

「奴を吸収してくるんだな」

直澄は翔の顔をガッと掴んで言う。

「桑田、やめろ!」

佐々木和浩は慌てて入る。

だが、それは一足遅かった。

魔方陣は展開され、翔は眠りについた。


「久しぶり」

負の翔は翔に言う。

だが、翔は今の状況がわからなかった。

奴を吸収しろと言われ、顔を捕まれ、暗闇の中である。

「体を渡せよ。そうすれば桑田とか言う奴も、甲斐樹も殺してやるよ」

彼は自信満々だった。

「断る、あんたは何なんだ!」

「結城翔、もう一人のあんただよ」

もう一人の翔は、すっと背後に来る。

それは瞼を閉じた一瞬である。

グサリ、影の塊で負の翔を刺す。

「無駄だよ、俺とお前はどっちも結城翔なんだから」

負の翔は余裕だった。

この場所には樹達は居ない。

「そうそう、記憶消されてるみたいだけど思い出させてあげるよ」

その途端、空白の記憶が戻る。

影で一般人を襲い、総平を傷つけた。

「これは犯罪の範囲だよなぁ」

その記憶は衝撃的だった。

そして、翔は捕まっていないどころか魔法省で訓練をしている。

「どうする?俺に体を明け渡せば逃げられるよ」

「何でそんな事をした?」

自分はそんな事を望んではいない。

「君が望んだのに?」

「望んでない!」

「望んだんだよ」

クスクスと負の翔は笑う。

「ならもう望まない、やらせない!」

「バカ?殺せないのがわからない?」

「映像見てわかったよ、紫のやつで負を増幅させたんだろう?」

「だから?」

「本気で望んだ訳じゃない、理由はわからないけど俺がそう望むように仕向けられたんだ」

その言葉に、負の翔は虚を突かれていた。

「望まされた?俺が?」

「そうだよ。だって、今の俺がそこまで望んでいない。殺したいなんて思わない。見返したいけどね」

「は?」

「それでも君は俺の一部だから。見返す為に力を貸してくれない?」

「何言ってる?」

「さっきだって、力を貸してくれたでしょ?」

「……」

「人間皆多かれ少なかれ負の感情はあるもんだよ。ね?」

「……」

「だから、帰って来てよ」

立ちすくんだ負の翔は無防備だった。

そんな彼を翔は包み込む。

「仕方ないな、力を貸してやる」

そう言うと、負の翔は消えた。


「桑田、ここまでやる必要は無いだろう!」

「力底上げできればいいんじゃないの?」

「これじゃ、お前をこの部署に残せない。結城翔が暴走したら責任を取れるのか⁉️」

「その場合は殺せばいいじゃん」

それは、魔法省の人間として失格である。

「あのー、何か物騒なワードが聞こえたんですけど…」

「水を刺す…」

和浩が振り向くと、翔は起きていた。

「結果オーライですよね?」

「……指導者としては不合格だ。これから取り戻せ」

「ハイハイ」

「ハイは1回!」

頭を抱えたまま和浩は出ていった。

「じゃあ、訓練を再開しようか」

「ハイ!」

こうして、直澄は翔への訓練を開始した。


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