魔法省訓練6
「さて、あなたは何の魔法が使えるのかしら?」
松井秀美は言う。
「何って、スクーターと走るの早くするだけだよ」
「スクーター?」
「あんたらの、臣が開発した魔力式スクーターだよ」
「開発部署の?」
それは、魔力を発動させるだけの便利なものだ。
試乗を既に完了していると聞いていたが、まさか条治だとは知らなかった。
「あれは良いわよね」
実は、バイク好きの秀美は嬉しそうに語る。
魔力で良いならガソリン代も要らず、魔法省が支給なら格安で済む。
今や秀美はテスターの一人であった。
「カスタマイズすればバイクっぽくなるし、実は魔力式バイクを頼んでるのよ!」
「おい、訓練!」
「そうだったわね」
秀美は条治に言われ思い出す。
「鬼ごっこ、は無理ね…やっぱり身体強化かしら?」
「は?」
「足だけじゃなくて、腕だけとか全体とかに魔力を注ぐの。やり方は足と同じ。やってみて」
「雑だな…」
魔力を腕に…
「ちょっと、これエレベーターと同じじゃねーの?」
「あなたが今やってるのは確かに同じね」
そう言うと、秀美は右腕に魔力を込める。
「ごめんなさいね」
そう言うと、秀美は条治をぶっ飛ばした。
「こういう事よ」
勿論手加減はしているし、壁が少しはショックを和らげている筈だ。
「成る程な」
膝をつき、条治は言った。
「魔力を込める…」
右腕に魔力を溜め、今度は筋力をアップさせる。
「おらあ!」
右腕に魔力を溜めたまま、殴りにかかった。
「馬鹿ね、簡単に当たる訳ないじゃない」
そう、秀美は避けていた。
「これは、基礎からかしら?」
そう言うと、秀美は条治の拳を受け止めた。