103/228
魔法省訓練5
「君は影を使えるんだって?」
「はい」
桑田直澄は問う。
全身が黒く暗い、それは翔とは正反対の見かけだ。
「使ってよ」
「……」
なんとなく、気に入らない。
翔は無言だった。
「これ?」
そう、翔は魔力を既に使っていた。
それは樹が転校した時に使った術。
翔は直澄を影で動けなくしていたのだ。
「それ、君より魔力が高い人には効果無いよ」
そう言うと、直澄は歩いた。
「君も歩いたら?」
「?」
翔は言われた通りしてみる。
「足が上がらない」
「君が使ったものと同じ方法だよ。他には?」
直澄は問う。
直澄はデータとして事件を知っている。
だから、他にも使えると知っているのだ。
「使えません」
実際、翔の魔力は事件の前と同じ量に戻っていた。
「…これ、抜け出したら休憩」
影の能力で倒れさせ、影で手足を縛る。
そして、直澄はトレーニングルームから出ていった。
「抜け出したら教えてよね」
部長に言うと、見学室からも出ていった。