魔法省訓練4
「さて、始めようか。君の魔法を見せて」
石井貴久は笑顔で始まりを告げる。
出来る事はロープを出すだけ。
「他は?」
「出来ません」
総平の言葉に、貴久は困り顔をする。
「とりあえず、色々なものを出す所から始めようか」
「はい」
総平が返事をすると、貴久は手本をみせた。
「凄いですね」
総平は感心する。
貴久は野球ボールとバットを出したのだ。
「とりあえずこれは例題ね。こんな風に想像したものを簡単に出せたら全然違うから」
ちなみに、貴久が野球ボールとバットを出したのは高校時代にやっていたのが起因らしい。
だが、総平は運動が得意な訳ではない。
思い入れのあるものなんて無いのだ。
「それこそ魔法で風や氷等を出せたら一番だけど、とりあえず君は物体を生み出す事からだね」
貴久は笑顔で言った。
ロープだったら簡単に出せるのに、何故か他のものは出せない。
「火事場の馬鹿力?追い詰められて発揮しちゃったのかな?」
なら、と警棒を一つ出す。
「これと同じもの、または防ぐ何かを出してご覧」
貴久は笑顔で言うと、振りかぶった。
「た、助けて!」
総平は逃げた。
「ほら、なにか出さないと!剣でも盾でも学校にあるものでも、何でも出して!」
貴久は言いながら追いかける。
「何か…」
そして、総平は箒を出した。
「箒か…」
貴久は寸土目をすると攻撃体制を解いた。
「一回中断、君は魔法以外の基礎を習った方がいいね」
貴久は笑顔で言った。