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夏の雨 (仮)  作者: 葵
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in実家、お節介な人

「公輝もそろそろ結婚せんのね」

父の姉にあたる利枝 (としえ )叔母さんは、よくこの話題に触れる。

あー…、公兄お箸止まっちゃったじゃん。せっかく皆で楽しくしていたのに。

利枝叔母さんはいつも兄に結婚を勧めている。

まだ兄が社会人になりたての頃から飽きもせずお見合いオバサンごっこをしていた。ただ勧める女性は一癖も二癖もある人が多く、兄は只々迷惑している。

確かに三十歳の兄は結婚していてもおかしくない歳だ。

女性なら負け犬とか、行き遅れとか言われてもおかしくない年齢かも知れない。私の周りでも婚活に勤しんでいる人は多いし。

「お義姉さん、公輝も彼女と別れたばっかりやけんまだ考えられんのよ。なぁ、公輝?」

母が助け船を出してくれた。

「えっ!?あ、うん。まだ今は…」

「そんなこと言うて、もう二ヶ月は経っとるやろ。もたもたしよるといい女ん人は皆結婚してしまうんよ。」

利枝叔母さん以外は皆同じ気持ちなのだろう。先程まで楽しかった場がしんと静まり、嫌な雰囲気だ。

しかも、嫌な予感がする。こんな時は決まって私にも飛び火してくるのだ。


「大体、公輝も香華も仕事ばっかりしちょってから!さっさと結婚して、孫の顔を見せて親を安心させちゃらんといけんやろ。香華は彼氏くらい出来たんね?」

ほらキター…。あー、もう帰って欲しい。

「出来てないけど…。」

「仕事ばっかりしとっても女は駄目なんよ。子供を生んでやっと一人前なんやけんね。」

こう言う利枝叔母さんは、せっかく新卒入社した会社を三か月でデキ婚の為辞めたらしい。しかも、公務員で少しばかり良いお家の息子だった叔父さんを捕まえる為、強行手段に出ての事なのだと昔、酔っ払った父が話していた。叔父さんも気の毒だな。

ちらりと叔父の方を見ると、本当に申し訳なさそうな顔をしていた。

「女ん子は親元で結婚するんが一番やけんな。なるべく若いうちに結婚して、子供も一人っ子じゃ可哀想やし。私がいい人紹介しちゃるけん。丁度、いい人がおるんちゃ。四十歳で少し歳上やけどな、いい子なんやけど仕事ばっかりらしいんよ。ほら!うちの近所の坂の上のお家の石川さんとこの長男!」


坂の上の石川…。まさか、と思い出す。あの変態野郎…。

「昔遊んでもらったやろ。弘明(ひろあき)君は香華の事覚えちょったよ。」

アイツそんな名前だったのか。遊んでもらった記憶はないけど…

昔、叔母の所に家族で行った時、外で兄達と遊んでいたらハァハァと興奮したアイツに物陰に引き込まれそうになったことならある。

その時は兄が助けてくれたが、兄は激怒。私はそれから暫く男性に近付けなくなった。

あの時私は小学二年生だったな。

叔母も知っているはずなのに。

あんな変態を勧めるとは、姪をなんだと思ってるんだ。

この人は私の事も、兄の事もちゃんと考えてくれたことがあるんだろうか。

頭の中をぐるぐるとそんなことが廻っていた。


「私結婚する気ないから、一生。だから、変な人紹介してくれなくていいよ。」



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