in実家
「ただいまぁ」
なつかしい昔風な実家の玄関をガラガラとあける。
チャイムを鳴らす習慣はないのが田舎を物語っている気がする。
しかも、鍵も掛かっていない。
こんなところにも懐かしさを感じてしまう。
「おかえりぃ、お土産は?」
出迎えたのは従妹の井野真依美。懐かしいパッキンアイスを両手に持っている。
私より五歳年下の彼女とは子供の時から仲が良く、妹のいない私には可愛い妹的存在で今は専門学校を卒業して地元に帰ってきている。彼女も歴とした社会人だが、一年ぶりに会った従姉に対してまずお土産とは、なかなかどこで育て方を間違ったのだろう。
「真依ー、誰やったー?」
そう言いながらやって来たのはこれまたパッキンアイス片手に母の白石美希子。
本当にお客様だった時には恥ずかしくないんだろうか。
「ま!香華!おかえりぃ」
「んー。ただいま。」
やっと我が家だと思うと気が抜けて一気に疲れが出てきた気がする。
スーツケースと手提げの袋を置くと靴を脱いだ。
「それ、お土産?」
母の視線の先には空港の名前入りの紙袋。
まずお土産を聞くのは遺伝だろうか・・・。
「お土産は今日着くように送ったけん。これは空港で買った分。食べても良いよ。」
母は笑いながらさっさとお土産だけを持っていった。
「きょうちゃん、あげるー」
おそらく食べ掛けのパッキンアイスだ。
「・・・うん。真依のお土産も後で届くけん。」
「やったー♪今日休みで本当良かったわ」
真依美はけらけら笑いながら前を歩いていく。
相変わらず明るい家族だ。