三上動く
三上と上沼は大阪府内のとある駅にやって来た。
と言っても、電車に揺られて二分の隣の駅である。一応その市内の中心とあって活気があるが、しょせん、田舎町の中心部である。梅田や難波に比べれば比較的過疎っているといえる。
なので上沼はあえてツッコまなかったが、三上は青のジャージを纏っていて、この六月の気候の良さの中一人長袖である。まぁ、彼女の母校のジャージが卒業後一新されて現在は廃止されているので三上の姿にツッコむのは居ないが、彼女の長い髪の毛だけは非常に目立つ。踝までの癖のない黒髪はぞっとするほど美しく魅惑的であるがそれを執筆活動中以外は背中に流したままである。ちょっとした異世界感をもたらす三上は元気よく上沼との間に空いた空間に問いかけた。
「雅ちゃん、自分の家には行けそう?」
「って、ここにいるのかよ!」
三上の言葉に上沼がツッコむ。実は上沼はホラーは苦手である。そういう類とは仲良くしたくないのである。
が、三上は違うらしく、少し空いた上沼との間に笑顔で話しかけ続ける。
「そっか、ここから遠くないんだね、商店街の方か……大丈夫、だいじょうぶ、おねーさんとおにーさんが味方だから心配しないで!」
「俺は心配になるわ!」
という上沼のツッコミに三上は動じずに微妙に上沼の間に空間を開けて移動する。
「聞けよ!」
吠える上沼にむっとした顔をした三上が吠え返す。
「さっきから亮ちゃんうるさいの! 雅ちゃんがびっくりしちゃうでしょ!」
「そっちかよ! 心配はそっちかよ!」
とりあえず動かない上沼を放置して三上は商店街の方へ歩いてゆく、誰かに導かれるように右手をだして。それに動かない上沼ではない、イライラとしつつも彼女の後を追いかける。三上の保護者面をしているだけのことはあるのだと上沼は思っているのである。三上がどう思っているかは知らないが……