武器屋を目指す男 スティン
俺の名はスティン。職業は戦士だ。
16歳の誕生日を迎え、俺はいよいよ永遠の地下迷宮に挑むことになった。
店に残った最後の武器であるブロードソードと革鎧を装備し準備万端。
俺は蜘蛛の巣の張った、オンボロのカウンターを感傷深く見つめる。
武器屋『勇気の刃』。子供の頃、ここは数多くの冒険者が集まる活気のある店だった。だが、巨大総合施設『エリオン』が近所に現れてから状況は一変、瞬く間に客が流れ、店は経営が悪化。あえなく潰れてしまった。
失意の内に両親は他界し、姉のスティアが朝から晩まで働き幼い俺を育ててくれたのだ。
俺には夢がある。それは、この店を立て直し、かつての活気あった頃に戻すことだ。そのためには、店に並べる為の武器や防具が必要だ。
かつて店に降ろしてくれていた問屋は全てエリオンに買収され、俺たちに装備を降ろしてくれなかった。店が潰れた原因は、客が流れてしまったのもあるが、店に並べる為の武器や防具が無かったのも原因だった。
ならば、俺自身が迷宮に潜り武器や防具を現地調達してみせる!
そう考え、俺は日々の剣の修行を行ってきたのだ。そして、16歳の誕生日を迎えた今日、年齢制限が解除された俺は永遠の地下迷宮に挑めるようになったのだ。
「行ってくるよ姉さん」
「気をつけるんだよスティン。無理だけはしちゃ駄目よ」
心配そうに見送る姉を後にし、俺は永遠の地下迷宮に向かう。
まずは、大聖堂で登録を行うぞ!
ダンジョンの入口は街の中心にそびえ立つ大聖堂の中にあった。
ダンジョンで成り立つこの国は、ダンジョンを神が与えたもうた遺産であると崇め、この大聖堂を建てたらしい。
東西南北にある入口から、次々と冒険者たちが押し寄せ、受付は人でごった返してる。俺は近くにある受付窓口のお姉さんに話しかけた。
「はい、あなたは本日の受付番号3052番です。順番が来ましたら、あそこの魔法掲示板に番号が表示されますので、また来てください」
お姉さんに渡された紙に書かれている数字と、魔法掲示板に表示されている現在進行中の受付番号を見比べる。
「2556番……あと500人待ちかよ。とんでもないな」
俺は辺りを見渡す。
ダンジョンの入口をすっぽり囲む大聖堂は、とんでもない大きさの建物だった。遥か頭上に見える天井は、ステンドグラスの模様が霞んで見えるほど高く、横幅は、下手な村より幅広い。だが、そこには埋め尽くさんばかりの人、人、人。あまりの人の多さに酔ってしまいそうだ。
「やれやれだな。いつになったらダンジョンに入れるんだか……」
俺は壁に背を預け寄りかかる。辺りを見渡すと、同じようにして順番を待つ冒険者たちがいた。
「はぁ……3053番かぁ。先は長ぇなぁ」
と、その時、俺の隣からハァと深い溜息を吐く声が聞こえてきた。
3053番? 俺の1番違いか。
俺は、声が聞こえた方を見た。だがそこには誰もいない。
「はぁ……。腹減ったなぁ」
再び聞こえてくる声。俺は視線を下に落とす。そこには、ゴーグルを頭につけた背の低い一人の少女が居た。
俺の視線に気がついたのか、少女が俺を見上げる。
俺は、にへらっと引き釣った笑顔を見せる。
少女もつられ、にへらっと笑った。