シュウヤがユウシャになる一方俺はただの村人Aだった
3ヶ月後。
なんだかんだで俺の生活は充実していた。
生活は王都からのカネで保障されているし、なんだかんだ続けている酒場の仕事も調子がいい。
というか前職に比べたら天職過ぎる。
金周りがいいので何かと交友関係も充実していた。
というか俺が一方的に金で買っている感じではあるが、それでも前世のぼっちに比べたら随分良い物である。
優しい世界。
「トッシ!ヤギと牛のナムル添え頼むわ!」
「うぇい」
今日も今日とて仕事に励むのであった。
深夜。
酒場も閉まり、俺は家へと戻っていた。
するとどうだろう。建物の陰に、見知った影が2つ。
「あっ……シュウヤ様ぁ……」
「……」
(シュウヤ?……と、コッカちゃんだっけ)
2人は重なって何やら蠢いている。
声をかけあぐねていると、月が雲から現れ、2人を照らした。
あっ……(察し)
(シュウヤもやることやってんなー)
異世界なのに種付けの一つもできない自分がちょっと情けなくなった。
く、くやしくないもん!
それにしても旅に出たのにこの街に戻ってきたというのはなんだろう。
シュウヤもコッカちゃんも装備は良くなっており、旅の順調さは伺える。
もう魔王倒しちゃった?いやいや、倒したらものすごい凱旋パレードのはずだ。
って事は、王都に秘密アイテムがあったとかそういうのかな?
どのみち俺には一切関係ないけどね!
「はぁー」
境遇の違いにおもわず溜息が漏れる。
シュウヤは色々経験してるんだなー。
……俺は異世界に来てすらだらだらしてるだけだ。
金はいっぱいもらってるけど、こんな田舎じゃそこまで遊ぶ場所もない。
ちなみに脱童貞もできてない。
かといって、旅に出るほどの気概もない……。
(そりゃ勇者になれんわな)
メランコリックな気持ちで丘の上。
一人月を眺めていると、近場の草むらからガサゴソと物音がした。
「よう、久しぶり」
「ブルスラさん!」
ブルスラ、本種族名ブルースライム。俺が異世界で最初に出会った恩人である。
「なんや、結構順調に暮らしとるみたいやな」
「まあ生きるだけならですがね……」
そしてなんとなく世間話の流れに。
「俺と一緒に召喚された、シュウヤって子の方が勇者でして……」
「あー誤召喚やったんかぁ、災難やったなあ」
「ええ……」
「ワシらも大変なんやで……勇者一行にモンスターの巣がなあ……」
「シュウヤとは違う勇者もいるんでしょうか?」
「さあ?ワシらには一緒やけど……魔王関係ない子も襲うとか、ホンマ人間は暴力的やなあと思うで……」
「そんなことないですよ……」
「優しいんも話聞いてくれるんもお前だけやで……」
「うーん……ほかにもいると思いますけど……」
こうして、意味もなく夜は更けていった。
翌日、シュウヤ一行が酒場に顔を出したので、
からかい半分嫉妬半分であのセリフを吐いてやった。
「ゆうべはおたのしみでしたね」