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異世界リース物語  作者: ジーン
第二章
9/28

2日後

 朝、目を覚ます。

 随分ぐっすり眠っていたようだ。父と母はもうベッドから起きていた。

 父は私が起きたことに気付くと、タオルを濡らして渡してくれた。母は部屋にはいなかった。


「おはよう。エルナ」

「おはよう、お父さま」

 おうむ返しに答えて、渡されたタオルで顔を拭く。

 開け放されていた扉から、いい匂いが漂ってきた。きっと母が朝御飯を作っているのだろう。


 私は父に着替えを少し手伝ってもらいながら手早く済ませる。父と母の前では(エルナ)としての意識が優先されるようで、恥ずかしいとかは特に感じない。


 ベットに腰掛けた父が手招きをする。

「エルナ。おいで」

 父の手には櫛が握られている。

 私は大人しく父の横に腰掛けた。今日は父が髪をとかしてくれるみたいだ。何だかむず痒かった。

 今何時だろうと思って時計を見た。けれど、まだ時計の読み方を教わってないことに気付いた。

 今日、アンヌに教えてもらおうと頭の中にメモしておく。

 

 朝御飯を食べ終わると、アンヌがやって来る。それからアンヌと一緒に仕事に行く両親を見送った。



 そういえば二人はなんの仕事をしているんだろう。

 アンヌに聞いてみよう。

「アンヌ、お父さまとお母さまは、どこに行っているの?」

 我ながら語彙力のなさに落ち込む。

「町に行ってるんですよ。お父様は町を守る仕事をしていて、お母様は怪我をした人を治す仕事をしています。二人共町ではとても評判ですよ」

 アンヌはエスパーか何かだろうか。私の知りたいことをピンポイントで答えてくれた。

 私の中でアンヌの株がさらに上がった。


 それにしても母はたぶん医者か看護士として、父はなんだろう。警察?大雑把過ぎてちょっと分からない。まぁ後々に本人に聞いて見よう。


 アンヌと手を繋いぎながら歩いて、子ども部屋に着いた。

 靴を脱いでさっそくアンヌに今朝疑問に思った事を聞いた。

「アンヌ、時計って、どうやって読むの?」

「あら、時計ですか。ちょうどいいですね」

 そう言うとアンヌはいつも持って来ている鞄の中から、何かを取り出した。なんだろうと思いながら見ていると、アンヌが答えてくれた。

「これは、私の家にあった時計です。夫に頼んでばらばらにしてもらいました」

 よくよく見ると確かに時計の針や文字盤だった。家にあるのより幾分か小さくて分からなかった。それにしてもどうして分解したんだろう。

「昨日、エルナお嬢様が時計がどうやって動くのか知りたがっていたでしょう。どうせなら、実物を見せたいと思いまして」

 アンヌはすごくいい人だった!!知ってたけども!!

 私は感動で手をアワアワさせて挙動不審になってしまった。


 私が落ち着いた後、アンヌに子どもでも分かる時計の動かし方と文字盤の読み方を教わった。

 ついでに暦も判明した。


 まず時計の動かし方だが、なんと電池だった。

 電池の大きさは単1電池よりやや大きめの長方形で、両端が側面の一方向に向かって少し出っぱっている。大きさは色々あるが、これがこの世界の機械の大体の動力源になっているらしい。

 ただし、魔力がないと動かない。そして、その魔力を電池に流し込むためのものがあの黒い石盤だそうだ。

 石盤に触れて必要な分だけ魔力を注げば、大抵の家電は稼動するらしい。この世界の科学はいったいどうなっているんだろう。


 動力は一応分かったので時計の動く仕組みについて聞いたが、細かい部品が多いみたいでよく知らないみたいだった。まぁ私も時計の仕組みなんて詳しくは知らないし、他の機械の構造だって分からなくても使えるから問題はないのだろう。


 次に時計の読み方だ。文字盤を読む上で色々聞いていく内に、必然的に暦も判明した。

 文字盤に書かれた数字は12文字。それ以外のごちゃごちゃした文字っぽいのは文字ではなく、なんと全部模様だそうだ。

 精霊文字という精霊が書く文字がモチーフになっていて、ほとんどの時計に描かれているとてもポピュラーな模様らしい。


 さて、私は数字の数が12文字と分かった時点でもしかしてと思っていたのだが、そのもしかしてだった。

 1日は24時間で数えるらしい。長針と短針と秒針があり、数字が読めたら普通に読めるようになった。

 時計が読めるようになってなんとなく感じたことだけど、1秒が地球より長い気がする。

 違いが分かったところで地球には帰れないだろうから、特にどうと言うことでもないのだけれど。

 

 こちらでの1週間は8日だ。

 曜日にあたるのもある。

 土の日から始まり、火の日、水の日、風の日、木の日、竜の日、精霊の日、人の日。

 最後は国によって違うらしい。

 一応この世界の神話になぞらえてあるみたいだ。


 神はこの世界を創る時、最初に土と火を捏ね、水と風を纏わせて、木を育んだ。そして竜が現れ、精霊が称え、人が生まれた。

 ざっくりいうとこんな感じの神話だった。だがこれは諸説あるらしい。


 1ヶ月は1週間が4回で32日ちょうど。

 1年は12ヶ月だ。閏年みたいな年も無いようだった。

 今はリース暦3000年の6月22日竜の日だ。


 リースというのはこの世界の名前で、地球とかと同じ意味合いっぽい。

 ちなみに今さらだが6月20日が私の5歳の誕生日だったようだ。混乱状態だったので全然気が付かなかった。

 四季もあり1月から3月までが春、4月から6月までが夏、7月から9月までが秋、10月から12月までが冬だ。


 今は夏だがあまり暑いとは感じない。アンヌにその事を聞いてみると、なんと精霊が暮らしやすいように天候を調節してくれているらしい。

 精霊のおかげで天災も滅多に起きないのだとか。これにはかなり驚いた。精霊万能過ぎだろ。

 

 大体の疑問が解消されたあとは昼まで絵本の読み聞かせをしてもらった。午後からは生活魔術を実地で教えてもらう予定だ。





 昼御飯を食べ終えて家の外に向かう。

 ちなみに生活魔術は火と水を自身の魔力で出現させる事を指すのだ。最初は加減を覚える為に外で行うらしい。

 子どもに教えるのは危なくないのだろうかとも思うが、そうでもないらしい。生活魔術はそれこそ私より小さい子どもでも練習すればできるので、興味を持った時点で教えておかないと、逆に加減の分からないまま使って危ないのだそうだ。

 なので教わるときは水の魔術から教わる。火の魔術を誤って何かに引火させても、すぐに消せるようにだ。


 練習は家の前の少し開けたところで行う。

 昼御飯を食べているとき、アンヌがざっと魔力の説明をしてくれた。

 それをまとめるとこうなる。


 大前提として魔力には2種類ある。

 体内にしか作用しない生命神力と、体外に作用できる自然精霊力だ。

 同じものだが、作用の違いで名称を呼び分けているみたいだ。その2つをまとめて、もしくは自然精霊力だけを指して魔力と呼ぶらしい。

 今回教わるのは、自然精霊力と呼ばれる体外に作用できる方の魔力だ。



 魔術を使うための基礎


一、魔力は空気と同じく目に見えないが、自然界のどこにでもある。

二、魔力は生き物ならどんなものでも宿っている。

三、魔力は使う者の意志で形を変える。 

四、魔力は個々で保有量が異なる。

五、魔力総量が多いほど大きな魔術が使える。

六、魔力はすべて使ったら、大体1日で自然に元の魔力総量まで戻る。

  ただし、魔力総量が多い場合はその限りではない。

七、魔力で出した火や水は魔力で出来ているので、そのままの状態で長時間放っておくと自然に還ってしまう。

 以上。


 結論、魔力は超物質。


 なまじ科学の知識があるせいで色々突っ込みたい事はあるが(特に三番目)、そういうものと納得する他ないようだ。


 アンヌが持ってきていた洗面器っぽいものを地面に置く。お手本を見せてくれるみたいだ。


「では、この器に今から水を出現させますね」

 アンヌはそう言うと器に手をかざした。


「水よ現れよ」

 

 器の中にみるみる水が出現した。っていうかまんまだな呪文。

「言葉は慣れたら言わなくても自由に使えるようになります」

 そうなのか。

 そういえば母は呪文みたいなものは言っていなかったな。

「エルナお嬢様もさっそくやってみましょうか」

 えっ。

 見ても何も分からなかったんだけど。

 もうやるの?

「では、器を満たすイメージでやってみて下さい」

 やるみたいだ。

 ええい。やってやんよ!

 器に手をかざし、手の先に水が現れるのを想像する。

 呪文を唱える。


「水よ現れよ」


 バシャンッ!!

 器に水が出現した。

 ……あっさりと出来たんだけど。

 器の十倍の量の水が出たけど。


「あらあら」

 アンヌが少し驚いている。何か不味かったのだろうか。

「エルナお嬢様、もう一度できますか?」

 今ので何となく自分の魔力を意識することができた。あと何回かできる気がしたので頷く。


 もう一度水を出現させた。

 今度は加減が出来たのか、ちゃんと器に収まった。

「まだできますか?」

「うん」

「エルナお嬢様は少し人より魔力が多いみたいですね」

「多いの?」

「はい。今度、町の聖堂で調べてみてもらいましょうか」

「うん」

 よく分からないかったが一応頷いておく。

 もう2、3度水を出現させた。


 少ししか練習しなかったけど、水はもう自由に出せるようになっていた。

 ちなみにもっと練習して慣れるとお湯も出せるようになるらしい。

 今回はそれで生活魔術の練習は終わった。

 思ってたより生活魔術が簡単すぎて拍子抜けだった。まぁ誰にでも使えるからこんなものなのか?

 あとの時間はまた、文字の習得のために絵本の読み聞かせを延々としてもらった。


 夕方の5時半ごろに父と母が帰って来た。アンヌは母と少し話した後、帰っていった。




 今日も夕御飯の時に色々尋ねられたので生活魔術が使えた事とかを話した。相変わらず楽しそうに聞いてくれる。

 嬉しそうな表情をされるたびに、自分ではどうしようもない罪悪感を感じる。これに慣れる日は来るのだろうか。



 夕御飯を食べ終えて夜の8時には就寝する。たくさん覚えて少し疲れた。

 忘れないように頭の中で何度も繰り返し思い返す。

 私は今日も、両親のベッドにお邪魔して眠った。

11/23 父親の職業についてちょっと書き直しました。

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