神ってナニ!?
ここは何処だろう。私は確か死んだ筈だ。
切られた首に手を当てるとそこに傷はなかったが、同時に本来あるはずの体温を感じることも出来なかった。
死後の世界なんて本当にあったのかと少し驚いていると、目の前にいつの間にか人がいた。何かの儀式の時に着るような濃い青色のきれいな服、カミサマに仕えているような人が着る服を着ている。
長い銀髪に蒼い澄んだ目をしたその人は、中性的な綺麗な顔立ちに苦し気な表情を滲ませて私を見つめていた。見覚えのない人物だったが、つい最近にもどこかで会った事がある気がした。
数瞬視線が交わったあと、その人は落ち着いた声で話し出した。
「私はあなたがいた世界ではない別の世界の神です。あなたをこれから私の世界に転生させます」
…………。
いやいや、意味が分からない。何言ってんだこいつ。頭沸いてんのか。それとも死んだ後はこれが普通なの?
そういえば友人に勧められて読んだ本に何冊か、異世界に転生してうんちゃらかんちゃら~とかいうのがあったな、なんて考えながら私は現実逃避をしていた。
私が無言で何も言わない間も目の前の人物は重苦しい空気を背負って佇んでいる。
というかさっきから感じていた、目の前の人物に対する既視感が何なのかが今の言葉でようやく思い至った。これは私の勘なのだが多分間違いはないだろうと思う。なのでいい加減に沈黙が重いので単刀直入に聞くことにした。
「あんた、ルイスでしょう」
今にも泣きそうな顔をしていた目の前の人物は驚いて目を見開いた。当たりか。
「やっぱり。ここにいるって事は、私は何の、役にも立てなかったのか」
私は一人で勝手に納得して呟いた。
「いやその……ひ、人違いです!私の名前はルイセルシアです!」
ルイス(仮)が焦って手をわたわたさせた。それは見覚えのある仕草だった。
「……似たようなもんじゃん。あんた相変わらず抜けてるわ。……そんな顔してバレないとでも思ってたの?」
私は相変わらずどこかズレている友人に呆れながらも、どんなかたちでもルイスともう一度話せた事が嬉しかった。
「と、とにかく!あなたは先ほど、……死にました。だから今から転生させますっ」
「いや、だから何言ってんの?」
ルイスがここにいるのは私の力ではどうしようもない事だったので仕方ないとして。見た目が変わっているのもよく分からないけど、なんで神とか痛いこと言って私を転生させるとか言ってんの?意味がわからん。
「五歳ほどまで記憶を封印します。もう時間がありません。……ごめんなさい」
私の質問には一切答えずに早口でルイスがそう言うと、私の全身が光に包まれた。
あっという間に視界に何も捉えられなくなり、私の意識はそこで途切れてしまった。