プロローグ
*注意:間がすかすかの見切り発車なので更新はかなり遅いです!
拙い文ですが暇つぶしにでも読んで頂けたらうれしいです。
この世界の名はリース。二柱の神が存在する地球とは異なった世界だ。
リースには大陸が二つある。主に人族が住むリリアス大陸と魔族が住むダリアス大陸。
リリアス大陸の生き物はいつの時代も精霊と共にあり、自らの生まれ持った魔力を操って生きている。
リース歴2995年〇月×日
ここはリリアス大陸北西部にある、神官の国と呼ばれているロウ・リ-ス神聖国。
今、その神官の最高位にあたる神官長を中心に、十数人の高位神官達が神殿の奥深くであることを行おうとしていた。
「これより、界渡りを発動する。必ず探し出すのだ」
そう神官長が厳かに告げると、その場に居た神官達の体が淡い光に包まれていった。
神官長の声と共に、高位神官の1人であるフィンの体も光に包まれる。
魂が溶けるような不思議な感覚に襲われたフィンは、自身の緊張が高まるのを感じた。
この界渡りとは大精霊の力を借りて魂を世界(リ-ス)の大気に同化させて肉体から離し、世界を渡る神術の1つである。
フィンは気が付くと肉体から離れた魂だけの存在になり、魂の目を開くという感覚とともに、精霊に導かれて途轍もない速さで移動している事だけが分かった。
何色にも見える淡い景色が遠ざかり、幾らか経って落ち着いて周囲を意識すると、仲間達の気配をちゃんと見つけられた。フィンは本当に界渡りを行っているのだと、今さらながらに実感していた。
フィン達はこれから異世界である地界(チキュウとも読む)に行き、リ-スを救ってくれる勇者を探し出して連れて帰らなければならないのだ。
界渡りをしている十数人の神官達の多くは、勇者なんて物語の存在が本当にいるかどうか半信半疑である。
けれど最早、勇者という存在にに縋るしかないほどにリースは追い込まれているのだ。
今から約400年前の話だ。
魔物の跋扈する世界、暗黒魔界からの侵攻が始まった時、ロウ・リ-ス神聖国の神官達は一早くそれを察知し、魔物を通さないように大きな結界を張った。
神官達は多くの魔物の出現を予見し、人族や精霊族の管理するリリアス大陸の国々に知らせまわった。
結界は大規模なものになると高位神官が数人いないと張れないので、ロウ・リ-ス神聖国は神官が足りていない国には神官を派遣したりもした。だが、間に合わなかった国もいくつかあった。
それでも1度めの侵攻を防いだ後、魔物の動きは沈静化していた。
それを好機として当時の神官長の命令で、武装神官達がヴァイスに赴き魔物の動向を慎重に探った。
武装神官達が魔物に気付かれずにヴァイスに何度も足を運んだおかげで貴重な情報をいくつも持ち帰る事に成功した。魔物の生態についても知る事ができて徐々に事態は好転したかに思われた。
ヴァイス侵攻から370年経った今から30年ほど前、鎮静化していたと思われていた魔物の出現が段々と増えていく。
それを調査していた武装神官は、神官の長でありロウ・リ-ス神聖国の実質的なトップでもある神官長に対して、重大な危機が迫っていると報告した。
魔物達は、見えないところで長い年月をかけて力を蓄えていたのだ。
そしてある高名な予見者が、40年以内にはリリアス大陸に大規模な侵攻を行う可能性が高いと断言したのだ。
その予測が出てから、これまで以上に様々な戦力を高める案が出されて実行されてきた。
神官長をはじめとする各国の権力者たちは何度も話し合ったが、今の各国の戦力のままではたとえ勝てたとしても、リリアス大陸にいる半数以上の者は死に至る可能性があるという結論が出た。
だがしかしリリアス大陸の人間だけではそれを覆せる決定的な打開策は見つからず、いつ始まってもおかしくない侵攻を考えると神官長には策を選んでいる猶予はなかった。
神官長は独断で現状を打開できる可能性として、いるかいないかも分からない異世界人をリ-スに連れて来るという選択をした。
リースには異世界から来た、勇者が必要なのだ。
異世界に行く事に選ばれた神官の中でも特に優秀な神官達は、リ-スを救う為に必ず勇者を探し出さなければならないという強い使命を持っている。
界渡りは神術に最も長けていた神官長が行った事もあり、順調に目的地に向かって進んでいた。
もうすぐで地界に到着する。
その時だった。
フィンは次の瞬間、足をとられたと感じた一瞬の内に、空間のうねりに巻き込まれて流されていた。溺れそうな感覚に必死になって抗い続けていると、突然今まであった圧迫が全て消えた。
気が付くとフィンはリ-スとは違う世界にたどり着いていた。
呆然と今起こったことを思い返していたフィンだが、現実を直視するにはまだ気持ちの整理が追いつかない。魂だけのはずなのに、心臓が痛いぐらいに跳ねて頬に汗がつたった。
無常にも、周りには地界まで一緒に行く筈だった仲間達の気配は微塵もなかった。
フィンはきっかり3分頭を抱えて、現状を正しく理解した。
(は……はぐれた?)
フィンは恐る恐る心の中で呟いたのだった。
高位神官の1人であるフィンの気配が、もうすぐで地界に着くというところで消えて他の神官達に動揺が走った。
だが時間がないと理解していた神官長は、顔を歪めながらもその場に留まってフィンを探す事はしなかった。
光が途切れ、リースとは明らかに違う空間に出る。
地界にたどり着いたのだ。
ここから先は別行動になる。なるべく大きな範囲を捜索するためだ。
気落ちしている暇はなく、誰もがこれからの事を覚悟して気を引き締めた。
これから神官達は地界のまだ魂が宿っていない胎児に憑依して、この世界での肉体が死ぬまで勇者を探すのだ。
見つけた後はすぐにリースに帰る。
神官達はこの世界でどれだけ時間が経とうとも、肉体がリ-スに存在している限りは数瞬から数時間の差はあるが、同じ時間軸に帰る事が出来る。界渡りとはそういう術なのだ。
神官達は眼下に広がる世界を見下ろし、勇者を探し出す決意をして次々と地界に降りていった。
*主人公は次もほとんど出てこないです。次の次あたりでちゃんと出てくる予定です。