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琵琶湖伝  作者: touyou
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琵琶湖決戦編九十八「「あかつき峠の決闘その二」

 正英は一呼吸し、息の乱れを整えた。

 其の時、

「正英、刀を捨てろ。捨てねばこの者を殺す」

 甲賀伝兵衛の声が崖際からした。

 その方向を見ると、良之介が崖に追い詰められ、胸と腹に

三名の甲賀者の長槍を突きつけられて身動きのとれない状態

になっていた。

(ここまでにするか。もう六人も殺してしまった)

 生きることに未練をもたない正英は、気楽に刀を己の足元

に捨てた。

 あまりに気楽に捨てたので、甲賀伝兵衛は何か策でもある

のかと、次の行動をためらった。

 もしこのとき、甲賀伝兵衛が何のためらいもなく、正英に

長槍を突き出せば、正英は絶命したであろう。

 しかしこの一瞬が、伝兵衛と正英の生死を分けた。

「ズドドーン」

 鉄砲の発射音が二回、正英の背後から聞こえ、甲賀伝兵衛

は額を打ち抜かれて即死する。

 もう一発は、良之介を囲んだ甲賀衆の一人の後頭部をつぶ

していた。

 突然の新手の襲撃に、残りの二人の甲賀衆はたじろいだ。

 そのスキを見逃さず、良之介は甲賀の二人を谷底に突き落

とす。

(またこの世に生かされたか)

 正英が、嘆息しながら憂鬱そうに振り返ると、馬に乗った

雑賀孫六が笑いながら近寄ってきた。

 その後に、やはり馬に乗ったお耳役の与平と勘太がつづい

ている。

 孫六の手には雑賀衆愛用の二連銃(銃身が短い火縄銃で銃

口が二つあり、一度に二発撃てる銃)があった。

「孫六様、久しぶりに鉄砲の技を拝見しましたぞ」

 正英がいうと、

「ハハハ、そうか。わしは日本一の鉄砲集団雑賀衆の者ぞ。本

来の武術を見せたまでよ。腕はまだ衰えておらぬ」

 誇り高き雑賀衆の答えを孫六はした。

「孫六様、ありがとうございました」

 良之介が駆けてくる。

「良之介、長槍の間合いにとまどったか」

「孫六様、その通りです。どう動くか迷っている間に、囲まれ

てしまいました。勉強になりましたよ。でもなぜ孫六様がここ

に」

 良之介の屈託のない答えに孫六の顔もほころび、

「この国境 (くにざかい)を見張る役目の与平と勘太に感謝しろ

よ。長槍を持った妙な者共が近江との国境をうろちょろしてい

ると、二人がいうてきてな。昨晩の話から、甲賀信楽衆がお前

たちを待ち伏せしているのではないかと、急ぎ馬を走らせてき

たわけだ」

 と事情を説明した。

「ありがとうございました」

 孫六の言う通りに正英と良之介は、与平と勘太に感謝の言葉

を述べた。

 馬上で与平と勘太は、頭をかきながら照れくさがる。

 孫六は顔付きを変え、正英と良之介に言葉をかける。

「お前ら、このまま彦根に行くのは危険すぎるぞ。違う道から

彦根に入るべきだが、どこか心当たりはあるか」

「ウン、あります。ただ二日ほど潜入が遅れるかも」

 正英は即答した。

「二日くらい遅れてもどうということはない。それでは、早速

行け。われらは、この者たちの死体を片付ける」

 孫六に促され正英と良之介は、元の道を今度は下っていった。

 良之介は、歩きながら問う。

「正英様、どこに心当たりがあるのですか」

「今から、関(せき 三重県亀山市(旧・鈴鹿郡関町)に向かい鈴

鹿峠を越え、近江水口(滋賀県甲賀市水口町)から東海道を上っ

て、大津に行き、そこからお香のいる近江堅田(滋賀県大津市堅

田)をめざす。堅田からは船で琵琶湖を横断し、彦根にはいる」

 正英は、正面を見据えながらそういった。

 以下九十九に続

 ヨコ書きこの下のネット投票のクリックして一票入れてください。これを書いた努力賃です、情けをかけておくんなさい。

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