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琵琶湖伝  作者: touyou
74/208

琵琶湖決戦編七三「風ねぇーや」

美濃街道を歩む正英と良之介の会話は続いてい

く。

「良之介よ、彦根に入ってからのことは、弥助 (やすけ)

にきけとかいわれて、孫六様は彦根の弥助の家ま

での地図をお前に渡されたが、わかるんだろうな」

「わかりますよ。さっきお城で一度彦根に行ったこ

とがあるといったのは、弥助さんのところに遊びに

いったことなんですよ」

「弥助とお前はどういう関係なんだ」

正英の問いに関する良之介の答えは、お耳役の同

僚だがそれ以前からの知り合いで、良之介と同じく

善良寺で暮らしていたとのことである。

「そうか、お前は小さいころから弥助を知っていた

わけだ。それなら弥助は信用できるな」

「できますよ、何言ってんですか。いい人ですよ」

「フーン、お前と弥助は武術的には善良寺だから、

竜雲和尚の兄弟弟子か」

「そうですよ。八年位前かな。孫六様が竜雲様に

お耳役になれそうな人間はいないかと、聞きにきた

そうで、竜雲様は弥助さんを推薦されたそうです

・・・」

以下の良之介の話をまとめると、弥助は今年で三

十五歳(正英は三十四)で、竜雲和尚が大多喜の善

良寺の住職に来る前からの弟子だそうで、十二年

前に竜雲和尚は弥助とお風 かぜ)という十三歳の

少女を伴って大多喜に来たという。

「お風さんは・・・べっぴんか」

と正英は下品な笑みを口元に浮かべながらいう。

「それは、美しいですよ。ただ十五歳のときに得

度されて風韻 (ふういん)の尼といわれるようにな

りました。だから、いやらしいこと考えたら駄目

ですよ」

「仏門に入られたのか。今も大多喜に」

「それが、風ねぇーや(姉さん)は、諸国を行脚し

たいとかで三年前から旅に出て・・・それから行

方が不明に」

「それはしかたないぞ。美しき若き尼が一人で旅

をすれば、もう・・・あの、ちょっといいにくいが

・・・エッチされて・・・あの、なぁ、出された

り・・・しちゃって・・・エヘヘへ」

言いながら正英は恥ずかしくなったのか顔が赤く

なり、さらに興奮したのか軽く鼻血もでてきた。

「正英様なにいってんですか。風ねぇーやは武術

の達人ですよ。大多喜でやくざ三人が風ねぇーや

を襲ったことがあって、三人とものどをつぶされ、

その場で窒息死したんですよ」

「外功の達人か」

正英は鼻血を懐紙でぬぐいながら、聞く。

「もちろん。内功のほうもすごいですよ」

「どんな技だ」

「楽器の音に気をこめることで、その音を殺人音

波にするというものです。風ねぇーやは、一メート

ルほどの長さの小さい琵琶を弾きます・・・その音

で周囲の樹木の枝がすべて折れ、地面に落ちてし

まったのを見たことがあります」

「すごいな」

「すごかったです」

以下七四に続く


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