第二部琵琶湖決戦編七一「家老梶金平」
「何やってんだ、いいかげんに、しろーい・・・・・・Gメン」
怒鳴りながら一応のギャグらしきことも言いながら、広
間に入ってきたのは本多家家老の梶金平 (きんぺい)で
ある。
「朝から騒ぐな。忠勝様とて容赦はしませんぞ」
梶金平に怒られ忠勝はシュンッとなった。
「こんぺい、すまん」
忠勝は素直に謝る。
「わしゃ、きんぺいじゃ。こんぺいじゃない。とにかく、
忠勝様、朝食ができております。さぁ、お利口だから食事
にいってくださいね」
「ハーイッ」
忠勝は、ごはんちゃ、ごはんちゃと言いながら部屋を出
て行った。
梶金平は、
「残った人、集合」
と、孫六、正英、良之介を集める。
「あのね、朝からみんなで学芸会するために、登城させ
たわけじゃないの。特に孫六さん、君がいながらこの騒ぎ
はなんなの、いうてつかぁさいよ、ほんとうに、どげちこ
げちならんなぁ」
梶金平はネチネチと注意をしだしたが、その時間ももっ
たいなくおもったのか、すぐに、用件を述べる。
「正英と良之介は今から彦根に潜入してください。すぐに
出発。自宅に寄らずにね。彦根に入ったら、涼単寺に行き、
直政様の墓から骨を何本か持って帰ることと三成に似た坊
さんの確認。いいですか」
「はい」
正英と良之介は声をそろえて言った。
梶金平はさらに話を続ける。
「正英、お前はこの本多家で毒使いにおいては、忠勝様
の次に力があるそうだな。忠勝様から聞いたぞ」
「まぁ、ちいさい頃から、忠勝様にいろいろ教えてもらい
ましたから、毒薬の知識もありますし、毒に対する抵抗力
もありますよ。簡単にいえば私に毒は通じません」
「ウン、だからその場で直政様の骨を見て、毒殺か否か
をお前が判断してもよいということだ。判断つかぬときは
持って帰れとのこと。そのときは忠勝様が調べることにな
る。三成の顔もしっておるな」
「もちろん何度か見たことはありますから、ご心配なく。
ただ、彦根の町の中を歩いたことがないので・・・・・・
良之介は」
「一度行ったことがありますが、その日のうちに帰った
ので詳しいとはいえませんが・・・」
梶金平は、
「そのことは、孫六から聞けばよい。孫六、大手門まで
こやつらを見送ってくれ。その間に、教えてもらえばよい。
それでは、これで解散・・・・・・あぁ・・・・・・正英と良之介よ
・・・・・・今からの活動は、当然だが隠密行動である。お前
たちの生死に本多家当局は一切関知しないから、そのつ
もりで・・・・・・死して屍 (しかばね)拾う者なし・・・・・・死して
屍 (しかばね)拾う者なし・・・・・・死して屍 (しかばね)拾う者
なし」
といった。
正英は、「死して屍 (しかばね)拾う者なし」は、「大江戸捜
査網」のエンディングのパクリだと言い掛けたが、梶金平様
では、反応悪そうと思って、言わないことにした。
以下72に続く