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琵琶湖伝  作者: touyou
28/208

第1部関ケ原激闘編28「合戦終了」

 本多隊は、島津兵を埋葬している木俣守勝の

家臣たちを、横目で見ながら前進していく。

 すぐに島津追撃に出た木俣隊に追いついた。

「守勝、その包帯はどうした」

 木俣守勝と並走しながら本多忠勝が問う。

「馬鹿をやって、直政様からムチで叩かれもう

した」

「そうか、あの直政が怒るようなことを、おぬ

しがしたなら、存外まことのことをしたかもな」

 と木俣守勝の返事に答えると、さらに己の馬

を加速させる。

 木俣守勝も抜かれてなるかと、馬を加速させ

る。

「忠勝様、ここで負けたら井伊家の恥でござる」

「なにー、頭に包帯まいた奴に、誰が負けるか」

 両者の意地の先頭争いは、後に続く本多、木

俣両隊の速度をも上げさせていった。

 島津追尾の一番手になっている、井伊直政の

本隊がもう眼と鼻先である。

 というより井伊隊は動きを止めていた。

 その井伊隊の中から、数本の槍を戸板代わり

に組み合わせた上に乗せられ、何人もの兵に囲

まれ出てきたものがいる。

 忠勝と木俣守勝が馬を並足にして、近づくと、

運ばれてきたのは井伊直政であった。

 木俣守勝はすぐに下馬し、直政に駆け寄る。

「直政様、大丈夫でございますか」

「…守勝か…さっきはわしが、やりすぎた。す

まん」

 そういうと井伊直政は意識を失った。

「直政様、お気を確かに」

 木俣守勝を含め、周囲の井伊家のものたちが、

直政に声をかける。

 忠勝は、近くにいた広瀬将房に、事情を聞く

と、島津衆の肩に手が届くほどに迫り、

「我は井伊直政。敵に背を見せるが島津の戦法

か」

 と大音声を発した瞬間に狙撃され、その弾丸

が直政の左腿 (もも)を貫通し馬の背で止まった

らしく、馬が立ち上がり、直政はそのまま落馬、

地面に倒れたとのこと。

 話を聞き終わると、

「そうか」

 と広瀬に言い、忠勝は

「出発」

 と本多隊を前進させた。

 ただ直政の負傷で追撃を終える格好になった、

井伊の騎馬隊が壁となり、井伊隊の前に出るのに

手間取る。

 やっと本多隊全員が出れたことを確認した忠勝

は、最後の激を飛ばした。

「今日の合戦で、いまだ戦うはわれらのみになっ

た。武士としてこの機会を与え給うた天に感謝す

べし。今からの追撃は、地の果てまでの追撃であ

る。天地都在我心中 (テンティツゥザイウォシン

ジュン)・・・・・・」

「待った、待った、待った」

 本多隊の背後から大声を挙げ、忠勝の激をさえ

ぎるかのように馬を駆けさせてくる者がいた。

 家康側近、安藤直次である。

「本多様、戦闘打ち止め。大殿の命令でござる。

全軍、急ぎ帰陣すべし」

「安藤、家康様が今日の戦は終わりといったのか」

 忠勝の問いに、

「島津を追っていったものたちに、命令が伝わら

ぬであろうと、この直次を大殿が使わしたのでご

ざる」

 そういうと即座に安藤直次は立ち去った。

「殿、島津は自力で薩摩に帰れと、天の命令が下

りましたな」

 雑賀孫六が言うと

「これで今日の合戦は終わったのか」

 忠勝は、自分に言い聞かせるように、言うので

あった。


 以下二九に続く


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