表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
琵琶湖伝  作者: touyou
26/208

第1部関ケ原激闘編26「酒盛りの相手」

 「急げ」

 木俣守勝 (きまたもりかつ)は己 (おのれ)の家臣団を叱咤した。

 今、島津追尾の先頭に立ったのは、己と己の家臣たちであるこ

とを木俣守勝は大いに自覚していた。

 井伊家娘婿にして家康四男松平忠吉を負傷させるという大失態

を演じた井伊家の面目を保つには、井伊家の手で島津義弘を討つ

しかない。

 そしてその機会が自分に与えられたのだ。

 100メートルほどの前方に丸に十の字の島津の旗指物と八名の者

が、道の中央に立ちはだかっているのが見える。

 「みんな、体を低くしろ」

 木俣守勝が騎馬隊八十名全員に声をかけた。島津の火縄銃を避け

るためだ。

 木俣隊は馬の首に抱きつくようにして突進していく。3発の弾丸が

木俣隊に向かってくる。

 一発は当たらず、二発が馬に命中したが、大勢に影響はない。

 前方の島津衆には三丁の鉄砲しかなかったのだ。

 木俣隊はそのままぶつかるように島津衆の中に突っ込む。島津衆

は木俣守勝の騎馬隊の圧力で、吹っ飛ばされ、人間の原型をとどめ

ない形で死んでいく。

 木俣守勝は騎馬隊を停止させた。さらに前方に五名の島津衆がい

たのだ。

 この五名の島津衆の中に、長寿院 盛淳もいる。

 長寿院は己の残った家臣12名をふたつに分け、少しでも追手の追

撃の速度を緩めようとしたのだ。

 長寿院は叫んだ。

 「我は島津義弘なり。かわいい家臣共を、殺させながら逃げるに

飽きた。死にたくてたまらん。気が狂わんばかりじゃ。この死に狂

いの相手をしてくれんか」

 木俣守勝も応える。

 「良きお心がけと存ずる。拙者、井伊家家老木俣守勝。戦 (いく

さ)なれば多勢に無勢は御容赦あれ。全員下馬 (げば)」

 木俣守勝は騎馬武者を全て馬から下ろした。

 そして長寿院に呼びかける。

 「島津義弘様、参りますぞ」

 「おう、地獄の酒盛りの相手に何人か、お連れもうそう」

 長寿院が言うや、木俣守勝は突撃を命じ、木俣隊は猛烈に駆け出

した。

 以下27に続く


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ