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琵琶湖伝  作者: touyou
25/208

第1部25「烏頭坂の風に消えた」

 その声を聞いた忠勝は豊久のもとに駆け寄った。

 豊久は苦しい息の中から言葉を発した。

 「我は、島津豊久と申す。島津義弘の甥にあたる者でござる。島津の

こと、何とぞ、何とぞ、お許しを願わしゅう存じまする」

 すでに死人の顔色の豊久の言に、忠勝は

 「承知、承知。島津のこと、この本多忠勝にお任せあれ」

 と答える。

 豊久は、一瞬、顔をほころばせたのち、落命し、忠勝は落涙した。

 いつのまにか本多隊も忠勝と豊久の周りに集まり、その情景に心打た

れる。

 [黙祷(もくとう)

 忠勝の(めい)で、烏頭坂は、風の音のみが耳に伝わる風景となった。

 「黙祷やめーい。きんぺい」

 忠勝は梶金平を呼ぶ。

 「この南に瑠璃光寺 (るりこうじ)という寺がある。そこに島津豊久

殿を運び、供養を致せ。わかったな」

 梶金平は当然の指示とうなずく。梶金平は島津豊久の遺骸を運ばせる

ために数名の者を選び、瑠璃光寺に向かった。

 忠勝は島津豊久を見送ったのち、全員に号令をかけた。

 「我らは、島津追尾で、井伊家に遅れを取った。しかし、島津義弘公

に勇者の死を報告せねば、わしの仁義が(すた)る。今からは徳川の恥

を雪ぐために島津は追わぬ。勇者の義に我らも勇者としてこたえるため

に、島津を追う。意地でも井伊に義弘公は渡さぬ」

 今後の決意を本多隊全員に下知したのち、忠勝はいつものように単騎

駆け出していった。

 雑賀孫六が「殿につづけ」と号令を発し、いつものように本多隊全員

が、忠勝を追って烏頭坂を下っていったのである。

 以下26に続く


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