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琵琶湖伝  作者: touyou
24/208

第1部関ケ原激闘編24「戦場の虫たち」

 「本多様。あなたさまの危難を救い為された、我が主君を非難

するとは、筋違いでござる」

 井伊直政の傍らにいた、井伊家の旧武田家臣団の代表格である

広瀬将房が、逆に忠勝を批判した。

 「よいよい。年柄年中、筋違いをやっておられる本多殿じゃ。

それより木俣守勝の後を追い、島津を捕まえるぞ」

 井伊直政は鷹揚な言い方をし、直政とその一団は、急ぎその場

を立ち去っていった。

 「あいつら人間じゃねぇ、たたっ殺してやる」

 低くつぶやくように言うと、忠勝は井伊直政の馬に向かい跳躍

すべく、地面を蹴った、…、地面を蹴った…、なぜか地面を蹴れな

い。

 眼を落とすと、忠勝の両脚を梶金平が必死で押さえていた。

 「こんぺい、放せ。」

 「わしはこんぺいじゃない、きんぺいじゃ。殿、短慮はなりま

せぬぞ」

 「馬鹿、あいつら人間じゃねぇ、虫けらだぞ。何匹殺そうが、

かまわん」

 [殿、一寸の虫にも五分の魂。600キロの牛には300キロの魂」

 といいながら、雑賀孫六が、忠勝を羽交い絞めにする。

 「こら、馬鹿者ども。こんぺい、孫六、主君に何をする。放せ、

直政が行ってしまう」

 その様子を見守っていた本多衆の中から声が上がった。

 「殿、井伊の者たちの姿はもう見えませぬ」

 それを聞き、忠勝も観念したのか、

 「わかった、もう良い。わかったから、わしから離れよ。天地

都在我心中(テンティツゥザイウオシンジョン)

 と言った。

 天地都在我心中は忠勝が全身の気を集中させ、外に爆発させる

時の呪文である。これ以上俺を怒らせるなと言っているのだ。

 すばやく梶金平と孫六は忠勝から離れた。

 「ハアーッ、むなしい、虫けらでも徳川の人間か」

 忠勝は深くため息をついた。

 その時、

 「ただかつ…さま」

 と島津豊久が最後の気力を振り絞って、忠勝を呼んだのである。

 以下25に続く


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