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琵琶湖伝  作者: touyou
20/208

第1部関ケ原激闘編20「頂上決戦へ」

 義弘本隊の先鋒、山田有栄 (やまだ あり

なが)が烏頭坂の頂上に差し掛かった時、豊久

の一団を脇に見て、速度を緩めることなく一礼

する。

山田有栄に続く一団も、同様の行動をとった。

 ただ義弘は自分の考えを超えた豊久の行動に

愕然とし、停止命令をだす。

 己もここで死のうとしたのだ。

 しかし、その命令は、「しんがり」役の長寿院

の言葉で吹き飛んだ。

「敵がすぐそこにきたぞ。殿を守り、急ぎ、坂を

下れ」

 長寿院の後方の坂下から凄まじい土煙が坂を登っ

て来ているのだ。

 島津兵は主君の命令を無視し、どんどん坂を下っ

て行く。

 馬上の長寿院は、豊久を背中に見て、

「わしもすぐに、いきますぞ。あちらで、一献つか

まつる」

 と叫びながら駆け下りていった。

 長寿院が通過するや、

「鉄砲衆、前に出よ」

 と豊久の号令がかかる。

 豊久は鉄砲衆十二名のうち、前面に七名を座らせ、

そのあとに五名を立たせ、鉄砲衆の後ろに、己と他

の佐土原衆を徒歩 (かち)で並ばせた。

 そして鉄砲衆に一斉射撃でいくと伝えた。

 豊久は、あの整然とした騎馬集団を統率するもの

は、絶対に先頭集団の中にいると読んだのだ。

 さらに先頭集団の馬達が倒れれば第二集団の馬達

も、速すぎる己の速度のため、倒れた馬を避けられ

ず躓き、倒れていく。

 地面に投げ出された武者たちを効率的に殺してい

くには、徒歩での突撃が良いとも考えていた。


 一方、騎馬隊の先頭で指揮する本多忠勝は、義弘

本隊との距離六百メートルは、義弘本隊の速度から

その最後列が烏頭坂の頂上に達した瞬間に、騎馬隊

に全力疾走させれば充分に差を縮められ、下りで義

弘の捕捉可能と計算していた。

 馬の速力は全速力なら二百メートルを十二秒弱で

ある。

 上り坂を考慮しても四十秒で頂上に到達すれば、

充分と読んでいた。

 しかし、その読みは崩壊する。

 頂上に鉄砲衆の姿が見えたのだ。

「こんぺい。速度を緩めろ」

 第二集団を率いる梶金平に忠勝が叫んだ。

「わしゃこんぺいじゃない、きんぺいだ。りょう

かーい」

 梶金平も応える。

 忠勝は騎馬隊を二つに分け、第一集団を最精鋭

の五十名、第二集団を残り二百名で組織し、自身

が率いる第一集団をペースメーカーとして島津隊

を追尾していたのだ。

 己の第一集団の速力を緩める暇はなかった。

 すでにあと百五十メートルで頂上である。

 緩めれば、狙い撃ちされる危険性は一層高まる。

 第一集団の者達の「生」の可能性を上げるには、

速度を増すことだ。

「行くぞ」

 忠勝はさらに馬を追った。

 第一集団全員がそれに続いた。


 以下二十一に続く

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