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琵琶湖伝  作者: touyou
185/208

第三部江湖闘魂完結編百八十一「柳生秘伝「月影」」

 第三部江湖闘魂完結編百八十一「木の葉隠れと月影と」


 正英は頭を二、三度振って気を取り直して、暗報をにらん

だ。

 暗報は、腕組みをして一五〇センチ九〇キロの突き出た腹

をさらに自慢げに突き出して、十メートルほど前方から、正

英と良之介に優しいまなざしを注ぎ、

「正英、勝負をあせったな。赤布を斬ったところまでは正解

だ。だがその後は、いったん床に降りて、もう一度、西砂制

邪悪を使い、わしの視界から姿を消して、その上で、毒の霧

の中から居合い抜きの奇襲をかければ、恐らくわしは倒れて

いただろう。まだまだお前は若いということか」

 と正英の攻めの組み立て方を批評する余裕を見せた上で、

「お前ら二人まとめてあの世に送ってやるから安心しろ。東

命寺派最終奥義「木の葉隠れ」だ」

 と微笑みながら言うや、暗報の体全体にどこからともなく

美しき赤や黄色の木の葉が現れ、その木の葉が暗報にまとわ

りつき、暗報を包んでいった。

 そして暗報を包んだ木の葉全体が猛烈に回転しながら、正

英と良之介に迫りだしたのである。

 東命寺派最終奥義「木の葉隠れ」とは、回転する木の葉自

体がのこぎりの刃のようになり、攻撃する相手の体を切り刻

んでゆくという殺人技である。

 当然、回転する木の葉からは、毒もまかれていく。

 正英も良之介も、暗報と自分たちの力量の違いを自覚し、

反撃の気力も起こらず、死を覚悟するしかなかった。

 そして、二人は人生の最期の景色を見たと思った。

 木の葉に包まれ迫り来る暗報の背後に、大きな白光を見た

のだ。

 しかしそれは、正英と良之介の人生最期の景色ではなかっ

た。

 突然、はじき出されるかのように、回転する木の葉の中か

ら暗報がその小さき体を丸くしながら飛び出してきて、本堂

正面の板戸にあたり、板戸を倒しながら廊下に出るとそのま

ま階段を転がり落ちて、地面にしたたかに体を打ちつけたの

だ。

 白光の先にいたのは、柳生兵庫助。

 月の光を己の剣に反射させ、その反射した光に己の気を込

めて、狙う敵を倒すという、新陰流秘伝中の秘伝「月影」を

正英と良之介の危難に際して繰り出したわけである。

 地面に落ちた暗報に、正英から何かのときには助勢をと依

頼されていた雑賀孫市が、藤堂衆が落とした鉄砲の火縄に火

をつけて、三十メートルほどの距離より必殺の銃弾を放った。

 暗報は弾道を正確に捕捉した上で、上半身をを九十度倒し

ながら弾丸をよけたのであるが、さすがに月影を受け、「気」

が大幅に体内から減少していたのか、それとも孫市の「気」

が弾丸に込められていたのか、左の肩の辺りをかすかにかす

り、わずかに肩の筋肉が削げ落ち月にむかい飛んでいった。

 肩を押さえた暗報は左にはしり、「もみじの馬場」を駆け

下りてゆく。

 しかし、途中で足が止まった。

 馬場の参道からの出口の三門あたりに、破壊的な殺気を感

じ、それ以上走れば、「死ぬ」予感がしたのだ。

 月明かりのみの馬場の参道に、六人の者たちが右斜めに座っ

ているのが見えた。

「誰だ」

 暗報が闇に問いかけた。

「乗月源三 (のりづき げんぞう)と申す 。柳生七子 (やぎゅ

うしちし琵琶湖伝九四、九五参照)が頭領で、他の者は七子の

面々でござる」

 闇から乗月の声がした。

 同じ柳生の者ということで、柳生兵庫助は、高明寺の警護に、

常に近畿を徘徊し、治安の維持にあたり斬り捨て御免の「上方

御免状」という近畿地方通行自由の許可状を所持する柳生七子

を呼んでいたのである。

                          百八十二に続く

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