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琵琶湖伝  作者: touyou
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第三部江湖闘魂完結編百二十八「孫六、決断す」

「その通りだ。先入観は捨てるべきだ。しかし、これ以上三

成か否かを詮索しても無意味だ」

 孫六が決然という。

「どうされたいので」

 十蔵が孫六にこれからのことを聞く。

「まずは三成の確保または暗殺だ。できれば身柄を確保し、

桑名に送り事の詮議をしたい。最悪の場合、殺すことになる

だろう。ただ三成を確保した時点で、広瀬、いや木俣様も含

めてかもしれないが、井伊家の謀反人たちは、全力を挙げて、

我らを殺しにくるだろう。しかし隠密裏に動くしかない。も

しこのことを公にすれば、井伊家は反徳川の立場で彦根に立

て籠もるだろう。さすれば、全国の反徳川の大名や大阪の豊

臣家が井伊家に呼応し立ち挙がるは必定」

 孫六の推測は周りを頷かせた。

 正英がいう。

「今、大切なことは源氏長者と征夷大将軍の詔 (みことのり)

を朝廷からいただくこと(第一部三十二参照)。井伊家が武装

蜂起をすれば、また戦乱の世となり、朝廷の詔など夢のまた

夢。この井伊家の見えない大火事を見えないままに鎮火する

ことが肝要。三成を確保するより、すぐに殺し、大火事が起

こっていることを知っている人間がいることを、井伊家に教

えるべきでは」

 お香が反論する。

「英さん、間違ってる。英さんたちの行動は井伊家に筒抜けだ

ったし、井伊家再潜入では二度も襲われた。井伊家は、大火事

を分からぬようにしたいけど、気づかれたなら其の時は、殺し

合いをする覚悟はできてるはず。気づかれたから行動を控えよ

うという段階ではないわ。もう食うか食われるかの真剣勝負の

段階に入ってる」

 腕組みをして聞いていた一歩十蔵が、案を出した。

「私は場合によっては、忠勝様が井伊家に直接介入し、井伊家

の謀反人たちを理によって抑えることが必要かと。もし理によ

ってうまくいかないなら、実力行使で井伊家の上層部の人間を

木俣様を含めて全員暗殺して幹部たちの総入れ替えをし、とに

かく火事を消すことにすればよいでしょう。ここで議論するよ

り忠勝様の判断にゆだねるべきでは」

 正英と良之介が同時に右手を挙げ、賛成の意を示す。

 孫六も賛同し決断した。

「よし決めた。今からの各自の行動を指示する。十蔵はわしが

書く報告書をもってすぐに桑名に向かえ。おぬしの足なら明日

の朝にはこの場にいよう。正英と良之介は、新しい任務がある。

彦根はわしと十蔵と今涼単寺の偵察にいってる与平と勘太で間

に合うし恐らく、忠勝様も応援をよこすであろう。実は京都の

反徳川の公家の中に過激な動きがあり、親徳川派の公家たちが

かなり危険な状況になっている。さらには、徳川家の朝廷工作

の実行役である金地院崇伝様の命も何度も狙われているのだ」

「われらに崇伝様の護衛役を」

 正英が先を言った。

「そうだ。京都所司代板倉勝重様の直々の要請だ。すでにお耳

役の残りの五名にも声をかけている。明日の昼、大津坂本の日

吉大社が集合場所だ。正英が指揮を執ってくれ。良之介は正英

が責任者であることを他のお耳役に告げよ」

「御意 (ぎょい)」

 正英と良之介は声をそろえて了解の返事をした。

 孫六はさらにお香にも声をかけた。

「お香さんあんたにも頼みがある」

「え、あたしになんですか」

「信長の遺書の行方を、探ってもらいたいのだ」

 お香はキョトンッとした表情をし、

「孫六様、今何を探せとおっしゃられたので」

 と聞き返した。

「信長の遺書だ」

 再度、孫六がいう。

「信長の遺書」

 初めて聞く言葉に、お香のみならず他の三人も思わず声を挙げ

た。


 以下百二十九に続く

 ヨコ書き。この下のネット投票のクリックして一票入れてください。

情けをかけておくんなさい。


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