第1部関ケ原激闘編13「本多義士伝」
銃弾が銃口から出てくるのが見えた忠勝は、即座に
愛馬、三国黒の鞍から五メートルほど真上に飛び上が
る。
的をなくした弾丸が主が消えた三国黒に命中し三国
黒は絶命する。
飛び上がった忠勝は、手にもつ槍を頭上で猛烈に旋
回させ、ヘリコプターよろしく、フワリフワリと宙を
浮き、五名の石田鉄砲衆の背後に降り立つ。
その五名が背後の忠勝に対しようと、ふりむけば、
待ち受けた忠勝の、横殴りの槍の一旋、五名全員、頚
動脈を削がれ落命する。
「とのー」
梶金平 (かじ きんぺい)が馬を駆り、忠勝の救出に
向かえば、その梶の背後から、三名の石田足軽衆が、
手に手に刀を持ち、襲いかからんとする。
忠勝あわてず、己が槍を放つ。
「ウグググッ」
三名の足軽は、忠勝の槍に串刺しにされ、悶死する。
「こんぺい、助太刀無用」
と忠勝が言えば、
「わしゃ、きんぺいじゃ、こんぺいではない、……
との、うしろじゃー」
梶金平が叫ぶ。
忠勝が振り向けば、槍を放した今が機会と、石田の
足軽、八名がおのおの長槍を手にして、突進してくる。
忠勝は、
「クハーッ」
と息吹をし、全身に気をそそぎこむや、両の腕で寄
せてくる8本の槍を払い、そのまま腕を円運動させ両
脇に、四本ずつ槍を抱え込む。
その抱えた両腕に力を込め全てをへし折れば、槍を
折られた足軽たちは呆然としてその場に立ちすくむ。
次の瞬間、忠勝は、抱えた両腕を手のひらを見せな
がら前に突き出すと、両脇に位置した折れたる槍たち
が、弾き出て行き、足軽たちを襲う。
八名の足軽は各自の胸板をその槍に貫かれ、ゆるや
かに背後に倒れていく。
「との、すごすぎるよ、久しぶりにみたよ。一言坂
(その二参照)以来だなぁ」
梶金平が驚嘆の声を挙げながら近づいてきた。
そして忠勝の前に来ると、馬から降りた。
「こらぁ、こんぺい、早く石田の本陣にいかんか」
馬から降りた梶金平を忠勝が叱る。
「わしゃ、きんぺいじゃ、こんぺいではない…殿こ
そ、早く、わしの馬に乗れ。主 (あるじ)がいくら強い
とはいえ、足軽同様に戦って、家来が馬に乗れるかよ。
早く乗ってくれ」
それは梶金平の心からの主君忠勝への思いであった。
「きんぺい、ありがとう」
梶金平の名を、思わず真面目に呼ぶ、忠勝であった。
以下一四に続く
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