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琵琶湖伝  作者: touyou
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第二部琵琶湖決戦編百二十一「一歩十蔵」

 第二部琵琶湖決戦編百二十一「一歩十蔵」

「そっちのいい女は誰だ。わしに酌をせい」

 三人は笑いながら板間に上がると、囲炉裏を囲んで

座る。

「孫六様、酌も何もこれは白湯では」

 正英が孫六の傍らに置かれた茶碗の臭いをかいだ。

「なにぃ、酒ではなかったか。しゃくにさわった、も

う酌はよいぞ釈由美子」

 おやじギャグらしきものを孫六がいい、良之介が付

き合いで大笑いしたが、それまでであり、一歩十蔵も

上がってきて孫六の隣に座った。

「お待ちしておりました。外からの声で孫六様がすぐ

におわかりになり、誰もいないなどと妙なことをおっ

しゃられて」

 十蔵は、孫六に対してかなり遠慮した物言いをした。

「十蔵、そう遠慮した物言いをするな。わしの家来で

あったのは雑賀の時代だろ。もう十七、八年前のこと

だ。みんな一歩十蔵だ、よろしくな。秀吉の雑賀攻め

で雑賀衆はバラバラになって、その後いろいろあった

ようだが、彦根に落ち着いてもう十年以上居酒屋をし

ながら生きてきたのだ。一日に二百キロ歩く男よ。こ

の男の一歩は普通の人間の十倍はあるところから、一

歩十蔵と呼ばれるようになった。この男とわしのつな

がりは今日まで誰も知らない。信楽衆の槍に倒れたあ

の弥助もな。三成存命の噂を教えてくれたのは、実は

この男だ。弥助が死んだ今、しばらくわしのために動

いてくれることになった」

 孫六がそう言うと、

「さっき軽くいいましたが一歩十蔵です、どうぞよろ

しく」

 と十蔵がみんなに愛想よく礼をした。

 正英らも、孫六の雑賀時代からの知り合いでこれか

らの仕事に協力してくれる十像に敬意を表し、丁重な

挨拶をした。

 そのあとで正英が不思議そうな顔でいった。

「なぜ孫六様がここにいるので」

 良之介も己のひざを叩いて、

(なぜ)

 といった顔で孫六をみた。

「芝居だよ芝居。作戦なんだよ。お前らを利用してわ

しらがのんびり彦根に入るためのな」

 孫六が大声でうれしそうに答えた。

「俺たちはおとりだったのですか」

「イエース。あのあかつき峠にいったのは、お前らを

救う目的もあったが、井伊家はおまえらのことしか頭

にないからな。デカイのと小さいの、目立つよな。い

やー、わしとあの時いた与平と勘太は、誰にも気づか

れずに彦根に堂々とはいれてな。与平と勘太はもう涼

単寺の偵察にいってるよ。お前らのおかげで仕事がは

かどった。隠密活動でこれほど気楽に相手方にはいれ

たのは初めてだよ。本当にアリガトサーン」

「そんな、わたしらをおとりにしたなんて」

「もうしつこいな、良之介は。もう一度いうぞ。お前

と正英はおとりにしたの、おんどりめんどり、こうの

とり、にわとり、かとり、とっとり、おとりだぁ、ハ

ハハハッ」

 「しゃく酌」のギャグに付き合って笑った良之介も、

今度は笑わなかった。

 以下百二十二に続く

 ヨコ書きこの下のネット投票のクリックして一票入れてください。これを書いた努力賃です、情けをかけておくんなさい。

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