琵琶湖伝第1部関ケ原激闘編その1
この物語はフィクションです。
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無断転載や引用を禁じます。
みなさん、わざわざおいでくださり、ありがとうございます。
この琵琶湖伝は三部構成で、中心は二部と三部です。一部は関ヶ原とそれ
以後一六〇二年の二月までを描いています。分量的には琵琶湖伝全体の四分
の一弱です。
一部は二部三部への橋渡し的役割です。二部三部は一六〇二年十一月前後
の徳川家康の家臣団と家康に反対する公家衆との戦いの日々を克明に描いて
ゆきます。
二部から主要人物が全員登場します。
主人公は、一部から出ている本多忠勝の護衛役井原正英、二部から登場の
堅田水舟拳と甲賀流信濃忍法を使う岡本お香。徳川方の準主役は、市来良之
介、本多忠勝、雑賀孫六、霧隠才蔵ほか多数。反徳川の準主役は独鈷比叡剣
の使い手である烏丸中将成幹、高雄山東命寺派の奥義を極める稀代の毒使い
高西暗報ほか多数です。
一部からでも二部から読んでも三部からでもかまいませんのでご自由にお
読みください。一部は関ヶ原の合戦シーンや政治的駆け引き、真田家の行方
など、二部はコメディありアクションあり、三部はアクション、アクション
またアクションです。
なお一行を字数二十八字前後にして今多い文庫本の行数にしてますので、
ご了解ください。特に二部三部。
では、歴史冒険アクション伝奇ファンタジーそしてコメディの琵琶湖伝ワ
ールドをお楽しみください。
琵琶湖伝1 サーカスにはピエロが
「霧が深いな、忠勝」
「深すぎますな。家康様の顔も、薄く、もやが」
「おぬしの顔もくもって良い顔に見えるぞ」
「いや、お前も」
「おい何だ。主君に向かって、その物言いは。無礼
だぞ」
「いいー、いえやす、さまー。お手打ちだけは許して
くだせー。」
「何が許してくだせーだ。気でもふれたか。」
「いいー、いえやす、さまー。お手打ちだけはー。こ
の霧がこの霧が、私の理性を狂わせ、気ちがいピエロ
にするのです。この霧の向こうには陰謀が見えまする。
そうそれは、クローディアスがハムレットの父を殺し、
一国をうばったような。邪悪な邪悪な者たちの謀りご
とが」
「忠勝、頼むから落ち着いてくれ。ハゲレットかオム
レットかハムレットかトットコハム太郎か意味不明だ
が、とにかく落ち着きなさい。お前も今年で五十二歳
だぞ」
「君は今年で五十八歳」
「君って言うな君って。年が分かっているなら、目上
の者を敬うくらいの気持ちがないのか」
「殿、この霧が私を。天地都在我心中(テンティツゥザ
イウォシンジョン)テンティツゥザイウォシンジョン、
テンティツゥザイウォシンジョン」
「やめーい、その変な呪文は。もういいから、冗談は
顔だけにしろ」
「申し訳ございません。しかし霧が深い。一メートル先
もみえませんな。これで大決戦したら同士討ちだ」
ウンと頷きながら家康は静かに眼をつぶった。
慶長五年、一六〇〇年、九月十五日、美濃の国関ケ原
午前八時。
濃霧の中に徳川家康を大将とする東軍と石田三成率い
る西軍が対峙していた。
家康の本陣の前方には福島正則・藤堂高虎・黒田長政・
田中吉政・細川忠興・ 加藤嘉明そして本多忠勝、榊原
康政、酒井忠次と並ぶ徳川四天王の一人 井伊直政と直
政の娘婿にして家康の四男松平忠吉などの東軍諸将が布
陣し、西軍の宇喜多秀家・小西行長・島津義弘・石田三
成らの軍と、にらみ合いを続けていた。
本多忠勝は家中の精兵五百名を率い家康の参謀役とし
て参戦し、部隊は家康本陣の1キロほど前に置き、差配
は家老の梶金平に任せ、自身は護衛役の井原正英のみを
伴い、家康の傍らにいたのである。
「長く眠れ、そしてゆっくりと起きるのだ家康」
忠勝は赤子をあやす母のように語りかけた。
「寝てはおらん」
家康が眼をひらいた。
「この霧を見てるうちに、何となくな」
「何となくとは。」
忠勝の問いに家康が答えた。
「この霧は俺だ。この五八年、俺は己の本心を霧で包
み見えなくしてきた。今川にも信長公にも。信長公が
本能寺で亡くなり、やっと俺は心の独立を得たと思っ
た。もう己の本心を隠す必要はないと」
「秀吉がきた」
と忠勝が言う。
「そうだ。秀吉が俺の前に来た。まだ霧を張らねばな
らぬかと。しかしこの霧は憂鬱なものではなかった。
俺が耐えれば日本が平和になる。すばらしい。俺の夢
の実現だ。忠勝たちは一番になる気がないのかと言っ
たな。」
「申した。なぜサルの風下に立つかと。」
「大切なのは戦乱の世が終わることだ。おぬしたちも、
そういうと納得した。」
「そして秀吉が死んだ。」
忠勝がつなげた。
「そうだ忠勝。平和な世にするには、民が微笑みなが
ら従ってくれる権力が要る。俺の平和は千年は続かせ
たい。秀吉にはそこまでの理念はなかった。朝鮮出兵
でわかった。悲しかった。これ以上、俺が霧を張るこ
とは民のためではないのだ」
「千年もお考えだったのか。」
「忠勝、なぜ福島、藤堂、黒田など豊臣家のものが、
俺に味方し戦おうとしているかわかるか」
「平和だ」
「そうよ。平和よ。あやつらは豊臣ではなく、民の平
和のために動く人間だ。この戦 (いくさ)は千年の平
和を日本に築く門を開けるのだ。」
「門を開けるだけか。」
「平和の道は、長くはるかな曲がりくねった坂と思え」
諭すように家康はいった。
「しかし、この霧が引かぬことにはその門も」
と忠勝。
「ウーン、合戦にはまだだな。今、する奴はかなりの愚
か者。敵と味方の区別がつかん」
そう家康が言った時、前方、はるか遠くで
「パーン」
という破裂音がかすかに聞こえた。
家康も忠勝も耳をそばだたせた。
パパーンと連続した音。
ついでウォーという声が。
「始まったのか。」
「御意 (ぎょい)。」
「どこのアホが始めたのだ。忠勝はここにいるし」
「御意。」
「お前以上のアホがいたのだ。」
「御意。」
「御意、御意いうな。考えろ。御意というなよ」
「あー、うー、・・・不明に候。」
「頼りにならん参謀殿じゃ。」
家康は苦笑しながら伊賀者総支配の服部半蔵を呼んだ。
「おぬしの手の者の報告は。」
「は、福島隊の前線で鉄砲の打ち合いあり」
「わかった、さがれ。忠勝、アホは福島正則だ。」
大殿 (おおとの)といいながら家康の旗本の一人がはいっ
てきた。
「井伊家家老、木俣守勝、殿に御目通りを乞う」
「了解じゃ。」
家康が言い終わらぬうちに木俣守勝が陣幕にはいってき
た。
「主君、井伊直政が口上。この戦 (いくさ)、徳川が戦。な
らば先陣、先駆け、徳川がすべき。我、四男ご子息松平忠
吉公とともに小人数で福島隊の前に出、敵、宇喜多秀家が
部隊に火縄を射掛ける。ここに関ケ原の合戦、始まれり、
以上。御免つかまつる」
そう言うや、木俣守勝は風のように立ち去った。
「おおとの、アホはおみゃーの息子だぎゃ」
そう忠勝はまじめな顔で言った。
以下二に続く
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小説家になろう」の2007年1月1日からこの12月までで、歴史ジャンルのアクセスの数はこの琵琶湖伝がナンバーワンでした。何とアクセス一位回数三六二回。三六二回も1位にしていただいた読者の皆様に感謝します。といっても歴史ジャンルはネット小説の世界ではマイナーなので200アクセス前後くらいで1位になるのですが、それでも継続できたのは皆様のおかげです。ユニークアクセスに変わる前は毎日一位なので、自分でアクセスやってるんだなどという、ネットらしい風評もありましたが、なんとユニークではっきり、アクセスの数が他の作品より多いことが実証され嬉しかったです。
評価ランキングも8月7日から12月11日までの長期にわたり連続一位となって望外のことでした。歴史ジャンルが全てのジャンルの1位になってよいのかなぁと思ってましたが私が決定したわけでなないので、ゆくところまでゆこうと思っていたら、12月12日に「名前:刺客2007-12-11 13:38 」とか「名前:読者2007-12-11 13:42」とかが二行ほどのコメントで文章評価:★☆☆☆☆ 作品評価: ★☆☆☆☆ 出版:買わないなどとあったので、頭にきて連続削除して次にきたひとも「あらし」だろうと思って削除したら、このひとのが不正削除になったそうで、何日間か30点減点されてましたが、4日ほどで元にもどしていただきました。管理人さんの許可の下で元に戻りましたので読者の方はご安心を。でいまは、評価300ポイントで1位にまたなったのですが、一応4ヶ月間連続一位に皆様のご好意でさせていただき、実はいまだに「小説をよもう」では一位なのですが、もう充分満足なので、しばらく評価欄を閉じて創作に集中していこうと考えています。何か隠居した爺さんのようなことを書いてますが、琵琶湖伝とマイスィートホームを大いに書いてゆきたいと思いますので、これからもご支援お願いします。
2007年12月30日。