第一章
神様への手紙を出した瑞希の生活・・・
第一章
朝一番のこの風はわたしのお気に入り。だってすごく落ち着くんだもん。すうっと鼻からまだほんのり冷たい風が入ってきて、わたしの頭の中を回り、わたしの体に吸収する。なんだかつま先が地面から離れそうな感じなのよ。わかる?わからなくてもいいわ。そのうちわかるわよ、あなたにも。
わたしは今日から中学生。中学生っていうと、なんだか青春まっさかりで友達としゃべりながら、恋のお話でもしようかしらとか、かわいい服を買いに、電車に揺られながら遠くの町まで友達と出かけたり。制服を着て毎日過ごすっていうのも、まるでファンタジックな物語の中に入ったようで素敵だわ。その夢も今日で実現するのよ。まだわたし、朝の空気を吸いきれてないのかしら?すっごく心臓がどきどきしてるわ。期待と喜びと不安と嬉しさ。なんだかよくわからないけど、とにかくなにかすごく大きなものがココロの中で動いてるって感じ。
「ほら、急いで。何そんなところでぼーっとしてるのよ。早くしなさい!」
出た。うちのお母さんは、ここらへんじゃちょっと有名。別に歌手とかモデルとかマンガ家とかそういうのじゃないの。ただちょっと他の人と違うだけ。その違いがわたしにとってすっごく邪魔で嫌でしょうがないの。きっとあなたもそうよ。こんなお母さんだったらすぐに家を飛び出してしまうわ。わたしはまだ我慢してるけど。
「行くわよー」
はいはい。うちのお母さんはついでに言うと口うるさいの。
まず最初にクラス分けの表を見なくちゃね。えっと、わたしは…一年C組だ。仲良くなれるかな。クラスになじめるかな。どうせかっこいい男子なんていないだろうし。先生はどんな人かな。
「瑞希!ぼーっとつったってないで、早く体育館に行くわよ」
はいはい。お母さんってばもうわたしは中学生なのよ!もう電車だって映画だって「大人料金」なんだから。子供扱いするのやめてほしいわ。
「はいは〜い。今から行くってば」
うわ。すごい化粧ね。今気がついたわ。目はこれでもかってくらい大きくみせて、あのピンク色のほっぺた。おまけに髪の毛は外ハネにして。もちろん靴はハイヒール…もちろん黒の。これだからうちの親はぜったいどこかおかしいんだわ。わたしはああいう風にならないようにしなくちゃ。
「よろしくね。わたし桃山加奈。加奈って呼んで」
びっくりした。急に声をかけてくるんだもん。可愛い子だわ。目が大きくて、髪の毛は茶パッ。染めてるのね。いい第一印象だわ。
「よろしく!わたし神下 瑞希。瑞希でいいわよ。仲良くしてね」
そうそう。中学校生活こうでなくちゃ。はー制服も結構かわいいし、友達もできたしこれでわたしの中学校生活もおもいっきり楽しめそうだわ。かっこいい先生もいたし。体育の竹下先生よ。すっごいかっこいいんだから。優しそうだったし。わたし好みの顔だったわ。
「帰るわよ。ほら早くしなさい!ぐずぐずしてないで」
忘れてた。この人がいるんだった。せっかく中学校生活を楽しもうってはりきってたのに。なんだかお母さんを見たとたん、全部楽しみがなくなりそうな気がするわ。
「わかったてば。そんな大声出さないでよ。恥ずかしいわ」
神様?わたしこのお母さんの娘じゃないわ。わたしこんなお母さんから生まれてきた覚えないもの。それにこんな顔してないわ。わたし。
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