とある肝試しにて
私、七ツ森 夏菜(ななつもり かな)は今、ド深夜の森を懐中電灯一つで歩いている。七ツ森だけに「森」ってか。うるさい。
何故こんな事になっているかというと、サークルで肝試しが開催されたから。サークル……そう……サークル……。
私は充実した大学生活を送ろうとテニスサークルに入ったはずだった。しかしそこはテニスサークルとは名ばかりのいわゆるお遊びサークルだった。バーベキュー、カラオケ、ボーリング……一切テニスをしない。さらにサークルのノリもウェーイ系でついていけない。
辞めたい……正直とても辞めたい……。けれど辞めるとサークルの人達から後でとやかく言われないか心配で辞めるに辞めれない。こんな性格の自分が嫌だ。
今日だって来たくもない肝試しに参加している。……ビビりで怖がりの私が。何やら曰く付きの場所らしいが、怖くなるので話は聞き流していた。
さっさと回って帰ろう。そう思って早足で急いでいると……。
ガサッ。
「!?!?!?!?」
前方から茂みを掻き分ける音と人影が見え、私はこの上なく驚いた。
ゆゆゆゆ幽霊!? 私は人影を照らす。するとそこには穏やかな表情をしている同い年くらいの青年がいた。人間……?
「こんばんは」
青年は優しげに挨拶をする。一瞬でも幽霊だと考えてしまった罪悪感から言葉をつっかえさせながら私も挨拶を返す。
「こ、こんばんは……」
しかし、この人は何故こんなド深夜に森の中に? 私達と同じく肝試しだろうか。まあいいや。
挨拶と思考もそこそこに私は青年の横を通り過ぎようとする。その時。
「この先には行ってはいけないよ」
「え?」
青年が言葉を発する。どういう意味かわからなかった。
「あ、あの、私、この先に用事が……」
指をさす私に青年はただ穏やかに笑っていた。なんだかその表情が有無を言わせないものに思えて私は怖くなった。
私は踵を返し、来た道を戻る事にした。そんな私の背中に向かって声が聞こえる。
「もう二度とここに来ちゃ駄目だよ」
柔らかな、けどどこか不気味なその声音に私は急いでその場から遠ざかった。
スタート地点に戻ってくるとなんだか騒がしい。
「?」
私は近くにいるサークル仲間に話を聞いた。どうやら部長が転んで木の枝に目を突き刺したらしい。
私は何故だか青年の言葉を思い出した。
『この先には行ってはいけないよ』
背筋がぞっとした。
その日は救急車を呼んで解散になった。
後日、部長は片目を失明したらしいと噂が流れた。
そして、あの日肝試しに参加した人達に次々と不幸が訪れているという事も耳にする。物を盗まれた、家族仲が悪くなった、事故にあった……。
大なり小なりあるが、気味悪がった部員達はサークルを辞めていった。私もそのどさくさに紛れて退部した。
きっとみんな「この先」に行ったのだろう。私が今無事なのは、あの青年のおかげだ。あの青年にお礼が言いたい。
けど、私があそこに行く事は生涯無い。だって……。
『もう二度とここに来ちゃ駄目だよ』
そう、言われたから。




