正義だけは
皆は私のことを英雄だと崇める。
実際、敵対国から国を守り、停戦協定を結ぶに至った経緯は、私の活躍をなくしては語れない。
ただ、毎晩同じ夢を見る。
錆びた鉄の匂いと、彼らのしぶきが肌を伝う感覚。
目の前で命を失った人々が、夢の中で囁く。「お前も来い」と。
助かった者と、我々の違いはなんだと問いかける。
助けた者の顔は覚えていないのに、死んだ者の目が頭から離れない。
停戦協定から1年。国家対策会議を終え、今から平和を願うパレードが始まる。
私たちの凱旋を心待ちにする民が、順路の脇に集まってきている。
踊り、歌い、数多くの歓声が、御一行を迎える。
我々は笑顔で手を振る。心から笑っている者は、一人だっていないはずだ。
「お前らのせいで家族が死んだ!」
――頭が、くらっとする。今、何て言った?
ゆっくり頭を上げて目をやった。
声の主らしき者に、周りの群衆が群がり始める。
やめてくれ、その男は間違えていない。
生まれた場所が違えば、声を上げたのはお前だっただろ。
目の端で連行されるのを見てるだけで、私は彼のように声を上げることはできなかった。
私は、国家対策委員を退いた。敵対国は、私がいなくなったことを知るや、停戦協定を解除した。
民は、また私に剣を取れと叫ぶ。
正義が一つならば、私は剣を握ることができたかもしれない。




