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正義だけは

掲載日:2025/12/26

皆は私のことを英雄だと崇める。

 実際、敵対国から国を守り、停戦協定を結ぶに至った経緯は、私の活躍をなくしては語れない。


 ただ、毎晩同じ夢を見る。

 錆びた鉄の匂いと、彼らのしぶきが肌を伝う感覚。

 目の前で命を失った人々が、夢の中で囁く。「お前も来い」と。

 助かった者と、我々の違いはなんだと問いかける。

 助けた者の顔は覚えていないのに、死んだ者の目が頭から離れない。

 

 停戦協定から1年。国家対策会議を終え、今から平和を願うパレードが始まる。

 私たちの凱旋を心待ちにする民が、順路の脇に集まってきている。

 踊り、歌い、数多くの歓声が、御一行を迎える。

 我々は笑顔で手を振る。心から笑っている者は、一人だっていないはずだ。


「お前らのせいで家族が死んだ!」


 ――頭が、くらっとする。今、何て言った?

 ゆっくり頭を上げて目をやった。

 声の主らしき者に、周りの群衆が群がり始める。


 やめてくれ、その男は間違えていない。


 生まれた場所が違えば、声を上げたのはお前だっただろ。


 目の端で連行されるのを見てるだけで、私は彼のように声を上げることはできなかった。

 

 私は、国家対策委員を退いた。敵対国は、私がいなくなったことを知るや、停戦協定を解除した。

 民は、また私に剣を取れと叫ぶ。


 正義が一つならば、私は剣を握ることができたかもしれない。

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