波が残したもの
「うーん」
「戸上様、お目覚めですか?」
「星間さん? ここ、どこ?」
「何も覚えてないんですか、戸上様? 友達のことが心配ですぐ確かめたかったのに、体、まだ傷だらけですよね。だから、私がおんぶするのが一番いい選択ですよ。」
「うわっ!」
「星間さん、ちょっと……下ろして……くれませんか?」 俺、手バタバタさせて、慌てて体起こそうとする。
「それは無理です、戸上様。体、まだ完全回復してません。歩くのだってキツいですよ。さっき、自分で起き上がれませんでしたし。」
「分かってますけど……これ……恥ずかしいっす!」 俺、顔カァァッと赤くなる。声、モゴモゴ。
「それに、俺……重くないですか、星間さん?」
「全然。私の任務は、主人のどんな命令でもお受けすることですから。」
変だな。俺、絶対前会ったことねえはずなのに、星間さんにおんぶされてるの、めっちゃ懐かしい感じ。体からヒンヤリ冷たい気配、でも胸に凭れるとポカポカ温かい。
「でも、俺、なんでお前の主人なんすか? 俺、ただの普通の学生っすよ。」
「きっと、当時小さすぎて覚えてないんです、戸上様。でも、私……」
ガラガラ……ゴロゴロ……バラバラ……ドサッ……ガシャン!
突然、遠くからガラガラ崩れる音が響いて、会話ブチ切れ!
「それ……」
「前回の戦場を片付けてるロボットの音です。」
「じゃ……全部……夢じゃねえのか……?」
「全部夢だと思いたいんですか、戸上様?」
「俺……俺……」
「無理に答えなくていいですよ、戸上様。その答え、心にしまって、本当に確信持てるまで待っててください。」
「星間さん、俺、分かんねえ……俺……」
「コウカ。」 その声、俺の言葉バッサリ切る。
「名前で呼んでください。昔みたいに。星間は、みんなの前で使う偽姓ですから。」
「でも、星間さん……」
……………………..
バタン……バタン……
星間さん、俺の言葉スルー。
「コウカ……さん、分かんねえ……」
「何が分からないんですか、戸上様?」
「なんでアイツら、俺たち攻撃してくるんですか?」
「クロガネ隊長が説明しましたよね? 俺たちがアイツらの貴重な鉱物、奪ったからですよ。」
「でも、分かんねえ……なんで誰も教えてくれねえんだ!?」
「全人類が忘れたい戦争だからです。この戦争で、人類、数百万の兵士失いました。食料、資源、ガッツリ減って、沿岸部全部、回復不能なほど破壊されました。人類にとって、これは誇れる戦いじゃなく、ただの資源争いです。」
「そんな戦争、終わらせるため、全人類、頭下げて海の連中と和解しました。惑星の存続のためです。栄光の勝利じゃなく、人類史の汚点です。」
「でも、そんなんなら、俺たちちゃんと教えろよ!」
「答えは簡単です、戸上様。希望のためです。」
「希望……?」
「そうです。敗北感と恐怖で育った世代は、自分たちのアイデンティティ失います。特に未熟な意識の世代は、社会に閉じこもるだけです。」
「だから、あの過酷な時代を生きた人間たちは一致団結。平和な今、戦争の痕跡を次世代の目から隠すことにしました。勝ったって胸張るためじゃなく、希望と活力に満ちた新世代を生むためです。」
「全真相は、皆さんが大人で、しっかりして、理解力あって、自分だけの精神持った時に明かされます。崩れないために。」
「じゃ、なんで海岸避けねえの? 壁作って海ブロックすりゃいいじゃん!」
「単純に考えてください、戸上様。地球、4分の3が海。そんなデカい壁作るのに、どんだけ資源かかると思います? しかも、日本、島国です。そんなん作ったら、世界から孤立して、滅亡一直線ですよ。」
ドサッ!
突然、片付け現場からデカい音! 今までのと全然違う! 俺、ビクッと反応。
「それ……」
チュッ……チュッ……チュッ……
「これが、皆さんが真実を隠したい理由です、戸上様。」
目の前、瓦礫の下から今見つかった男。石、真っ赤な血で染まってて、まだ乾いてねえ。ついさっき死んだみたい。
「うっ!」 俺、口押さえる。
「分かんねえ……なんで……なんでこんなことに!?」 俺、拳ギュッ、唇噛みしめる。
「戸上様、これが現実です。あの戦争が残した地上の痕です。瓦礫の間、見ててください。」 コウカ、淡々と遠く見上げる。
俺、ゆっくり顔上げる。周り見渡す。ただの瓦礫じゃねえ。人間の手がゴロッと突き出てる。血まみれの石、割れたコンクリ……それに
カーカーカーカーカー!
カラス、ウジャウジャ飛び回ってる。まるで大宴会に呼ばれたみたい。
信じられねえ。俺の育った街、友達と遊んだ場所が、こんな速さで変わっちまうなんて!
「うっ……」
「ハァ……ハァ……」
「戸上様。」
「戸上様!」
「戸上様!」
「俺……俺……大丈夫……」 まだゼェゼェ息切れ。
「戸上様、私からお願いがあります。いいですか?」
「俺……聞いてます……星間さ……コウカ。」
「クロガネ司令の提案、全部忘れて、普通の生活に戻ってください。」
「は!?」
「私の観察では、戸上様、ウォッチャーの能力あっても、この戦争に首突っ込むべきじゃねえ。可能なら、最近の全部投げ捨てて、別の街で昔の普通の生活に戻って欲しい。」
「でも、残る人……戦場行く人……コウカは!?」
「私は大丈夫。何度ぶっ壊されても、死ねません。だって、私、創り物ですから。」 コウカ、軽く微笑む。呼吸するみたいに平然。
「創り物……!? それ、どういう……!? なんで自分の命そんな軽くすんだよ!?」 俺、拳ギュッ、コウカにグッと密着。
「それは……私が言ったら、戸上様、完全に戦争に巻き込まれます。」
「目の前見てください、戸上様!」
ダダッ……ダダダッ……バタバタ……トタタタッ……タッタッ……
目の前、三人! シノミ、蓮、石川さんがこっち来てる!
「これが最後のお別れになりそうです。もっと一緒にいたかったけど、ここで終わりですね。」
「明日、補給車団来ます。友達と一緒にその車でここから離れてください。」
「俺……」 俺、なんて返せば? 肩ガシッ掴んでるのに、言葉出ねえ。
………………………………………………
「ハル! 大丈夫か!? ケガ重くねえ!?」 シノミ、俺の腕ギュッ、心配そうな目。
「ハル、何があったんだよ! お前、マジ心配したんだからな!」
「戸上さん、あの時の行動、無茶すぎですよ! 自覚あります!?」 石川さん、キリッと睨む、責める目。
「皆さん、落ち着いて。戸上さん、軽い怪我だけです。一時的に歩きにくいだけ。」
「今から皆さんにお任せします。私、別の仕事あります。」
「私が! 星間さん! この無謀野郎、俺たちに任せて!」
「じゃ、お願いね。失礼します。」 蓮に俺パスして、コウカ、サッと去る。
「ハル、お前、チャンス逃さねえな! 怪我ついでに星間さんの体によじ登るとか!」 蓮、ニヤニヤ、下世話な笑み。
ドンッ!
「何すんだ、ネネ!?」
「みんなが蓮みたいに下品じゃねえよ。」
「どういう意味だよ、ネネ!?」
「字面通り。お前、脳みそどこに落としたんだ、蓮?」
ギリッ!
二人、ビリビリ火花、殺気!
「いつも喧嘩すんな、二人は? でも、今日だけはハルのために我慢してよ!」 シノミ、二人見て、クスクス微笑む。
「フンッ!」
蓮と石川さん、プイッ両方反対向く。
「でも、マジ度胸あんな、ハル。故障ロボに突っ込むとか!」 蓮、俺見て、キラキラ尊敬、ニヤリ楽しそう。
「ロボット?」
「まだ隠すかよ、このバカ。クロガネさんが全部話したよ。救助ロボがガス爆発で不具合起こしただけだって。」
その言葉、どう返せば? 俺、顔下げて、ブツブツ呟く。言っていいこと悪いこと、頭でグルグル。
「ま、今は関係ねえよ。戸上さん、明日最終避難車団来るから、そんな心配無用だ。」
「でも、なんでお前らまだここにいるんだ?」 俺、キョトンみんな見る。
「それ聞く!? ハル、お前行方不明なのに、どうやって友達が置いてくんだよ!」
「ハル、ずっとそばにいるって約束したよ。」 シノミ、俺の手ギュッ、優しい目。
俺たち、おしゃべりしながら、仮設集結地へ。明日出発の準備。
「ねえ、ハル。ちょっと聞きたい。黒鎧の奴、どうなった?」 シノミ、俺の手スッ、耳元コソッ。
「あいつ……あんま覚えてねえ……でも……日の出で撤退した。」
「ふぅ……」
「よかった……!」 シノミ、胸に手、小さく呟く。俺、聞き取れねえ。
「何か言った、シノミ?」
「なんでもないよ、ハル。気にしないで!」
結局何だ? またモヤモヤ。直球聞けねえ。聞き間違いってことにする。そう思いたい。
………………………………………………………………………………………………….
テント内、クロガネ、提案書読んで、報告書チェック。
ダダッ……ダダダッ……トタタタッ……バタバタ……タッタッ……
「緊急報告!!!」
「何だ、そんな慌てて!? 報告しろ!」
「ハイッ!」
「衛星画像によると、嵐が真っ直ぐこっち来てます!」
「クロガネ隊長、この情報、どうします!?」
「嵐到達まで、あと何時間だ?」
「8時間後、上陸予定です。」
「隊長、このペースじゃ、次戦前に民間人避難終わりません!」
クロガネ、指組んで、グッと顔下げる、考え込む。
「隊長、指示を!」
「隊長!」
テント内、ザワザワ、声グチャグチャ。でも、
ドンッ!
全員シーン!
「最優先! 全住民を影響区域から即時避難! 全住民を避難車集結地に急げ! スピードアップだ!」
「民間人集結地周辺、最低3メートル離れた防御線構築! 即実行!」
「同時に、司令部に救援要請! Aegisを最速で派遣させろ!」
「ハイッ!」
「隊長、まさか……」
「その通りだ、兵士。嵐が来るなら、アイツらも来る!」




