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イケおじ転生 ~かつての黒歴史で旅をする~  作者: かりかり
異世界は素晴らしい!
9/32

第8話 黒歴史こそ最強の攻撃魔法

読んでくれてありがとう!

空が突然曇り、重々しい雲が村を覆う


「……ッ、あれは……!」


村人の誰かが叫んだ私が見上げると、空の中央に黒い裂け目が走っていた

まるで空間そのものが喰われたような、禍々しく蠢く暗黒


そして、そこから一人の騎士が降りてきた

否、人ではない 

骸骨の体に、漆黒の鎧、目は紅蓮に燃え、巨大な槍を携えている


「な、なんだあれは……!」


アーサーが小さく震えながら呟く

だが、エクシズはすぐに理解していた

声は震えていたが、はっきりとこう言った


「……魔王軍の、幹部……!」


一瞬、心臓が跳ねた

幹部つまり、今まで現れていた魔物たちとは比べ物にならない格の存在、私は内心ワクワクしていた


騎士のように鎧をまとった骸骨は、静かに口を開いた


「……我は、“ガルマス”魔王軍幹部なりこの地に、勇者の転生体が存在すると聞き、排除しに参った」


その場の空気が、一気に凍りついた

村の人々の表情が青ざめ、誰もが動けずにいた


「答えぬか、ならば……『パージ、黒雷槍バルグロス』!」


ガルマスの槍が虚空に向けられた瞬間、雷雲が渦を巻き、漆黒の雷が地を這うように迸る

とっさに、横から叫び声が飛んだ


「パージ・守護陣壁シールド・ドーム


エクシズが跳ねるように前に出て、魔法陣を広げた。雷撃はその光の壁に弾かれ、激しく火花を散らした。


「お見事です、エクシズ 守っていただき感謝します」


「へ、へへっ、村の人達はまかせてください……!」


私は彼女に笑い返し、ガルマスへと視線を向け直した彼の放った一撃は間違いなく、本気だ

 

ならば


「こちらも、力試しをしてみたいと思っていたところです」


私は静かに構え、右手を前へ突き出す魔力が渦を巻き、風が周囲を吹き抜けた


「万象を凍てつかせるは、静謐なる絶対零度……

 すべての熱よ、永久の眠りにつけ」


氷結界嵐アブソリュート・ブリザード


青白い魔法陣が展開され、空から氷の槍が雨のように降り注ぐ

だが、ガルマスは槍を回転させ、氷塊をすべて叩き落とす


「氷か……ぬるいな!」


次の瞬間、私は足元の地面を踏み砕きながら跳躍し、空中で指を鳴らしさらに詠唱を開始した


「炎帝の血脈に連なる者よその怒りを我が言の葉に込めて解き放て!天地を焼き尽くすは焔の旋律」


灼炎業輪フレア・カルマ!!!」


火柱が大地を割り、巨大な火の輪がガルマスを飲み込む

骨を焦がすような高熱が一帯を包み、爆ぜる炎が彼の鎧を焼くも、ガルマスは怯まない


「フン……パージ!黒雷壁ブラック・ストームウォール


闇の雷が壁となって炎を遮断するしかし、その瞬間、私は次の詠唱を重ねていた


「重力よ、力を集え引力と斥力の双極を交差させ、空間そのものを歪ませよ!」


重圧歪界グラヴィティ・クラッシュ


ガルマスの周囲に重力場が発生し、身体の動きが鈍る

その隙に私はさらに詠唱を重ね、空中に三つの魔法陣を展開した


「雷鳴轟け我が咆哮を刃と為せ!跳ねるは雷神の鉄槌」


雷牙連鎖サンダークロウ・チェイン


無数の雷の鎖がガルマスを縛り、全身に電撃が走る


しかし、ガルマスは呻きながらも、その圧倒的な魔力で拘束を破り、雄叫びを上げた


「この程度では、我を屠れぬッ!!」


全身から黒い瘴気を解き放ち、ついにその力の封印を解除する


鎧の一部が割れ、さらに禍々しいオーラが溢れ出す


 


「…ほぅ…ならば、次はこれだ」


私の足元に、闇の魔法陣が描かれる


「終焉の鐘が鳴るすべての命に告げる、汝らの魂は無へと還れ」


断罪虚闇ネザーバインド・カタストロフ!!」


地面から闇の手が無数に這い上がり、ガルマスを引きずり込もうとするが、奴は槍で魔法陣を突き破る


「ならば、こちらも使わせてもらうぞ。我が必殺をッ!」


ガルマスが構える黒き槍に、尋常ではない魔力が集中していく


「終わりだ、絶殺槍デルマヴィラス


次の瞬間、雷を帯びた異空間の爆裂波が地を這い、空を裂いた

空間そのものが断裂し、周囲の大地が抉れ、村全体が消し飛びそうになる


「ッ……このままじゃ村が……!」


 


私は即座に手を掲げ、詠唱を始める


「星よ、時よ、万象我が名の下に、時の輪を断ち切れ螺旋を逆転させ、刹那を無限へと転じろ……!」


時間封滅陣タイム・ゼロ


時が、止まった


雷も、爆風も、ガルマスすらもその刹那に凍りつく




私はゆっくりと歩を進め、世界が沈黙する中で、究極の詠唱を始める


「我が内に眠るは、原初の闇

 神々が恐れ、禁じ、封じたるは影


 その名は語られず、その姿は記されず、

 ただ“無”のみをもたらす災厄


 時の始まりより、滅びは我に宿されし

 世界が死を忘れたとき、我は目覚めん


 漆黒なる海よ、魂の彼方より来たれ

 血と闇と嘆きの詩を携え、永劫の静寂を纏いし者よ


 汝の名は“影”だが光に非ず

 汝の力は“闇”されど夜に非ず


 死よりなお深き深淵の理、

 虚無より立ち昇る冥府の咆哮


 我が言葉を刻め

 我が魔力を捧げん

 我が命を喰らい、ただ一閃のもとに葬らん!


 さあ、現出せよ、虚無の災厄」


「《黒葬絶影ネザーヴォイド・レクイエム!!!!!!》」


 


空間が収縮し、闇の粒子が全方位に広がったかと思うと、中心に巨大な“闇”そのものが生成され、それがガルマスを包み込み破壊し、そして消滅させる


その後、闇は空を突き破り、轟音と共に爆発を起こす


私はすかさず手を掲げ、詠唱を続ける


「守護の結界よ、我が意志に応えよ守天障壁セラフィック・バリア


炸裂するエネルギーの奔流から、村全体を覆う透明なドームが展開され、村の人達の命を守る


爆発が収まり、闇が晴れたその瞬間──



そこに、ガルマスの姿はない


だが、その時

私の耳に、微かな声が届いた


『……お待ちしていました、我が君』


その声は、確かに私の魂の奥に、直接響いていた


「……ガルマス、君はだれだ…」


私がそう呟いた直後、爆発の余波が静まり、空に光が戻り始めた


「クロウさーんっ!」


元気な声が波間を越えて届く

アーサーが満面の笑顔で走ってくるその後ろをエクシズも追いかけ、安堵の表情を浮かべていた


「すっごいよっ!詠唱、めちゃくちゃかっこよかったよ!えっと、…えーと……とにかく凄かった!」


アーサーは言葉が追いつかないほど興奮しているようだった


「クロウ、様…!!」


泣きじゃくる声が私の名を呼んだ


振り向けば、エクシズが目に涙をいっぱいに溜めながら、こちらに走ってくる顔はくしゃくしゃで、普段の明るい雰囲気は見る影もない


「すごいですぅ……!ほんとうに、ほんとうに……!魔王軍の幹部に…!」


「……エクシズ、落ち着いてください。泣かなくても大丈夫ですよ」


「むりですぅ……っ、だって……っ、ほんとに……!クロウ様…!」


彼女は感極まって私の胸に抱きついた震える手がマントを握りしめ、涙が頬を伝って落ちていく


私はその頭をそっと撫でながら、やわらかく微笑む


「ありがとうございます、エクシズ……でも、私一人で戦ったわけではありませんよ。村を守ってくれたのは、あなたです」


「ぅぅ……クロウ様……っ」


エクシズの嗚咽が、どこか穏やかに村の空気を和ませる


私がうなずくと、少しだけ誇らしげな気持ちになった

力を見せつけるためではない

守るために戦ったことが、彼らの目に届いたことが、少しだけ……嬉しかったのだ


そこへ、村の人々が集まり始めた


「……命を、救ってくれてありがとう……」

「なんという魔法だ……神かと……」

「おかげで、村が、私たちが無事だった……!」


年老いた者も、子どもも、皆が口々に感謝を述べる涙を浮かべる者すらいた


「私はただ……やるべきことをやっただけです」


そう答えながらも、心にはあたたかい何かが灯っていた


本気で詠唱を言い、誰かに感謝されるなんて中学時代の私が知ったら、泣いて喜ぶかもしれませんね


アーサーは私のマントを引っ張りながら、「クロウさん!またあれ見せてくださいよ!黒いもくもく!」と目を輝かせていた


私は思わず、苦笑する


「次は……もう少し、平和な魔法にしましょうか」

また読んでね!

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