第28話 終演は、美しくハッピーエンドに
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「……いけるよ、アーサー」
ワンの声が、背中から優しく響いた
それは不思議なほど静かで、確信に満ちていた
「ワン……ありがとう。お前が居てくれて、良かった」
俺はそう言いながら、右手を握りしめた
そこには、彼女との契約の証紅い紋章が燃えるように刻まれている
直後、全身を駆け抜けるような熱が走った
「……っ! これなら……!!」
アーサーの瞳が、紅く光を放つ
「その剣は、私達の貴方そのもの」
「今のあなたなら、きっと扱える」
ワンの指がそっと、俺の手に添えられた
目の前のナハリが、黒い盾をさらに大きくさせる
盾と盾が重なり合い、分厚く重い黒の大盾となる
構えに一切の隙は無い
だが
そんなもの……俺たちでぶち壊す!!
「いくぞ、ナハリッ!!」
全身の力を込めて、大地を蹴った
雷鳴のような音とともに、俺は一直線に走る
「“《パルス・エウメ・ニデス》!!”」
剣が、更に紅の光を帯びる
燃え上がるように
全身全霊の全てを力に変えて
振り下ろす
「……ぐっ!」
ナハリが構えた黒の盾が、音もなく粉々に砕けた
直後、紅と金の入り混じる光の斬撃が
ナハリの身体を飲み込んだ
爆音もなかった
ただ、圧倒的な静寂と強烈な光り
──それは、まるで光そのものだった。
光の中に、うっすらと見えたナハリの顔
仮面が割れる音が、静かに響いた
砕けた仮面の奥に見えたのは、
整った顔立ち……そして、何かを堪えるような沈黙の表情だった
次の瞬間
「……っ!?」
ナハリの全身を、漆黒のオーラが包み込む
まるで霧のように、空間を覆い尽くす黒い気配
俺が手を伸ばした時には
「……消えた……?」
その場に、ナハリの姿は無かった。
立ち尽くす俺の肩に、そっとワンの手が添えられた。
「……私達勝ったんだよ!アーサー!」
俺は小さくうなずいた。
燃え尽きるような身体を引きずりながら、
立ち上がる
「でも、逃げられちまった」
ワンが微笑んだ
「……いいんだよ、それでも」
俺は、砕けた剣の破片を握りしめながら、空を見上げた
満月が、静かに光っていた
そして同時に、結界が崩壊する
「っ……!」
私の身体が軽くなるのを感じた
魔力の封印が解けたのだ
「クロウさんッ!!」
駆け寄ってくるアーサーの声
再会の安堵が、心に満ちる
「皆……無事で何よりです」
私は微笑みながら、肩の力を抜いた
その時
「っ……ゼロ!」
シャッ
乾いた音と共に、空気が裂けた
ゼロの白髪が数束、宙を舞っていた
「!?」
背後に立っていたのは、倒れたはずのバルキラ
仮面の下の目だけが、ぎらりと赤く光っていた
「ふ、ふは……ふははは……! 貴方は、…まだまだ、甘いですね……」
誰もが動けなかった
その“気配”は、さっきまでとはまるで違っていた
バルキラの身体から、黒いオーラが立ち昇る
「……バルキラ、貴様……!」
私が身構えるより早く、彼の身体は闇の靄のように溶け出し始めた
そして最後に、確かに彼は言った
「……ガルマス、貴様が消えた意味が、今ならわかるぞ……」
「さらば、我が王よ……」
その声は、風に溶けて消えた
彼の姿も、完全に闇の中へと消え去っていた
残されたのは、切られたゼロの髪と、誰もが動けない沈黙だけだった
「……」
私も、言葉が出なかった
ただ、胸の奥に嫌な予感だけが、静かに渦を巻いていた
ふと、ゼロが手で自分の髪を撫でる
「……あー、せっかく伸ばしていたのに」
彼女の綺麗な長髪は、肩につくかつかないかぐらいの短髪になっていた
「……あまり気を落とさないでください」
私がそう言うと、ゼロはキョトンとした顔で、
「まぁこれはこれで楽で、いいですね」
と、まったく気にしていない様子だった
その自由さに少しだけ場の空気が和らいだ、そのときだった
ワンが静かにアーサーの隣に立ち、小さな声で話しかけた
「ねぇ、アーサー……さっきの“契約”のことなんだけど」
アーサーが不思議そうに右手の紋章を見下ろす
「これか? ああ、よくわかんねぇけど……助かった!ありが……」
言いかけたところで、ワンが目を逸らしながら、ほんのりと顔を赤らめる
まるでなにかを告白するような、微かな緊張を込めて言葉を続けた
「その契約の内容……“私と添い遂げること”なの。つまり……結婚、ってこと」
それを聞いた瞬間、アーサーは硬直し、次の瞬間には会場に響き渡る声を上げた
「はぁああああっ!?!?!?!?!?!?」
ゼロがぴくりと反応し、周囲の空気が一気に凍りつく
私はこめかみに手を当てて目を伏せ、エクシズは口元を押さえながら衝撃を受けた顔をしている
狼狽するアーサーが、目をぐるぐるさせながら叫ぶ
「ちょ、ちょっと待って!? 今のって冗談……だよな? ワン、それってまさか、本気……!?」
ワンは頷きもせず、ただ視線を伏せながら小さく呟いた。
「契約だから仕方ないの……!」
ゼロはそのやり取りを見て、アーサーの右手の紋章を見つめると、何も言わずにワンの方へ視線を移した。
その目には、なにかを悟ったような、諦めにも似た感じがあった。
アーサーは顔を真っ赤にしながら叫ぶ
「俺、まだ17歳っすよ!!」
クロウが静かに口を開く
「それもまた……運命というやつですね」
エクシズは、楽しげに笑いながらぼそりと呟いた。
「ふふ……これはこれで、悪くない展開じゃない?」
ワンは、照れくさそうに笑いながらアーサーの袖をそっと引いた
「……逃げても無駄だよ!だって“契約”だからね!」
アーサーは頭を抱えて天を仰ぐ
「俺の自由が……俺の青春が……!!」
その叫びを最後に、場には和やかな笑いと、どこか温かい空気が満ちていた
アーサーは頭を抱えたまま何度か深呼吸し、ふとワンの顔を見た
恥じらいを浮かべながらもまっすぐに見つめてくるその瞳に、何かを決意したような色が灯る
「……だったら、俺も覚悟決めるよ」
そう言うと、アーサーは勢いよくワンの肩を引き寄せ、唐突に唇を重ねた
「──!!」
ワンの瞳が見開かれ、時が止まったような一瞬
その直後、会場はどよめき、そして歓声に包まれた
「うぉおおおおおおおっ!?」
「キスしたあああああ!!」
「これは祭りですな!!」
歓声、拍手、口笛が響きわたる中、ゼロは半ば呆れたように目を細め
私は笑みを浮かべながら静かにワイングラスを傾けていた
エクシズは顔を赤らめながら拍手をしている
会場が盛り上がる中、突然厳かな足音が響き渡った
皆の視線が一斉に階段の方へ向かうと、そこには威厳をまとったミリオン陛下がゆっくりと現れた
ミリオン陛下は会場に現れるや否や、まずは騒動の報告を耳にしていたこともあり、魔王幹部が暴れていると思い身構えていた
だが、その表情はすぐに変わった
「魔王幹部が来たと思えば、今度は我が娘が結婚をするとな……」
陛下はゆっくりと深く息を吐きながら、微笑みを浮かべた
「150年生きてきたが、人生とは本当に何が起こるかわからんな」
静かに言葉を紡ぎ、その瞳にはどこか温かさが宿っていた
「ならば、我が祝福をここに捧げよう。若き二人の未来が幸多からんことを」
その声に会場は再び祝福の熱気に包まれ、アーサーとワンは少し照れくさそうに顔を見合わせた
そして後方からゆっくりと近づいてくる足音が一つ
「結婚って、どういうことなんだ……」
料理の皿を片手に、ヘルガがぬっと現れた
会話に入りそびれたようで、顔には微妙に戸惑いが混じっている
「騒がしかったと思えば、今度は指輪だの結婚だの……まったく、何がどうなってるんだ」
私はやれやれと苦笑を漏らしつつ、肩をすくめながら
私は穏やかに応じる
「……アーサーが、ワンと結婚するそうですよ。今、その……キスを」
「……結婚?」
ヘルガの目がぴたりと止まり、そのまま数秒間、完全に無表情のまま静止した
「……キス?」
そう繰り返したヘルガの顔は、固まっていた
いや…いつもこんな顔でしたね
また読んでね!




