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イケおじ転生 ~かつての黒歴史で旅をする~  作者: かりかり
異世界は素晴らしい!
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第1話 やって来ました異世界

読んでくれてありがとう!

今日から少しずつ更新していきます

この世界に転生して、どれほどの時間が経ったのでしょうか

空は蒼く、風は澄み、まだ何の人工物も見当たりません、魔物の気配も 人の気配も 今は感じられない

こんな環境こそ 自分の力を確かめるには最適でしょう


「さて まずは自分のステータスを確認しておきたいところですね」


私は軽く深呼吸しながら 手のひらを空に向けた

空間に魔力が集まり始める

懐かしき あの詠唱を口にする


「虚空よ開け 我が真の姿を映せ、 顕れよ(あらわれよ)、鏡影顕示 《ミラージュ・リヴァレイション》 」


魔法陣が空中に展開され その中央に淡く光る鏡が浮かび上がる

鏡の表面には 自分自身の姿とともに 光の文字が次々に現れていった


【ステータス】

体力:E

攻撃力:F

防御力:E

敏捷性:D

魔力:B

精神力:C


「ふむ 正直に言って かなり貧弱な数値ですね」


私は微笑を浮かべつつも 内心では少しだけ苦笑していた

だが 真に注目すべきはこの下に表示された二つのスキル


【スキル】

■ EXスキル:思念具現化イマジネーション・リアライズ

■ EXスキル:魔奏顕律マギア・オーケストリオン


「思った通り……ステータスこそ低くとも、スキルは最上級のようですね」


思念具現化イマジネーション・リアライズ

──中学時代に貴方が考えていた中二病全開の魔法、武器、技法を“現実に再現”できる能力


「当時の黒歴史が、今や力そのものになるというのは、何とも言えぬ快感ですね」


魔奏顕律マギア・オーケストリオン

──詠唱が長ければ長いほど、魔法の威力・効果が強化される能力 (芸術点が低いと威力低下)


「つまり、どれほど、くどくても、長くても良い…まさに、私のためにあるようなスキルです」


長ったらしい黒歴史詠唱に価値を持たせるこのスキル

これほど私に噛み合った能力は 他にはあるまい


「まったく……異世界とはお優しいものですね、まさか あの黒歴史が この世界では力になるとは」


自分の中で抑えていた何かが 静かに熱を帯びていく感覚があった

これは興奮だ

かつて“ただの恥ずかしい妄想”だったものが 本物の力として形になるという事実に 私の中の少年が叫んでいる


「……ふふ 興が乗ってきましたね」


魔法陣がゆっくりと霧散し 空間は再び静けさを取り戻す

私はコートの裾を直しながら 次の行動へ移る準備を整えた


「では 次は肉体強化詠唱の実験と参りましょうか」


私の声は やや弾んでいた


私は空に向かって軽く拳を握った

風は止み 草原の静寂が再び耳に満ちる


肉体強化魔法


——それは魔力を肉体に巡らせ 一時的に身体能力を引き上げる補助魔法……だと私は考えている


「強化対象は……筋力と体力を中心に…」

「詠唱は短く 効果は限定的に これは実験ですからね」


構築する魔法は 私自身が中学時代に“使えたら便利だな”というだけで考えていたシンプルな肉体強化詠唱

そんなくだらない魔法も今はこのスキルの下では 現実の力として発動できる


「我が血脈よ 響け 拳に刻まれし命の舞」

鼓動強制リズム・リフォース


発動と同時に 全身に軽い衝撃が走った

心臓の鼓動が一段と力強くなり 血が巡る音が耳に届く

足元の草がわずかに舞い 私の身体がわずかに浮き上がる


「……おおっ これは……」


私の視界が一気に冴える

視線を向けた草の一本一本がくっきりと浮かび 風の流れすら手に取るようにわかる

拳を握った瞬間に その重さと反発力の変化も肌で感じられる


ステータスウィンドウが再び浮かび上がる


【ステータス:強化中】

体力:B

攻撃力:C

その他は変化なし


「ふふ……素晴らしいですね 短い詠唱でしたが それでもこれほどの変化が得られるとは」


だが スキルの説明どうりこの詠唱魔法は “短いがゆえの限界”を感じる


身体は確かに軽く 力強さもある

けれど それは一時的な強化アップに過ぎず 真の強化とは程遠いですね


「やはり 魔奏顕律マギア・オーケストリオンの真価は 長い詠唱によってこそ発揮されるのですね」


詠唱が長ければ長いほど 魔法は強化される

だが それは同時に 詠唱の隙を敵に晒すことを意味する…

だからこそ 強化と発動のバランスを見極めねばならない


「詠唱を長くすれば強力な魔法になるが、同時にかなりの隙を見せることになる……」

「チートスキルには違いませんが…なんというかバランスがよく出来てますね」


地に足をつけ 静かに拳をほどいた

魔力が抜けていく感覚とともに ステータスも元に戻っていく


【ステータス:通常】

体力:E

攻撃力:F


「ふむ……元に戻るとやはり物足りないですね」


短い詠唱で身体能力を一時的に強化し、私は確信した

このスキルならば、貧弱なステータスも覆せる


ならば——次は「外見」ですね


「……この姿では、さすがに目立ちすぎますね」


私はネクタイを緩めながら、静かに呟く


いくら魔法が使えるようになったとはいえ、スーツ姿で草原を歩く中年男は、異世界ではどう見ても怪しい旅人にすら見えない、むしろ怪しい貴族か、訳ありの道化師だ

それに異世界でスーツ姿のまま歩けば、目立つだけでなく危険だ

それに、せっかく具現化の力を得たのなら、あの頃の“理想の姿”を纏わずして、何のための転生か


私はそっと目を閉じ、右手を胸に当てた


魔法詠唱で創り上げる衣装は、実在するどの服よりも、自分にしっくりくる“設定”で組まれている


私は、かつて夢見た「漆黒の孤高騎士」の姿を思い浮かべる

その姿をイメージの核に据え、静かに詠唱を開始した


「黒き風よ、夜を纏いし影となれ、我が身を包み、威厳と栄光を授けよ 幻想衣装創造クローク・ファンタズマ


淡く輝く魔法陣が地面に浮かび上がり、漆黒の繊維が空中に舞い上がる。

それはゆっくりと形を変え、私の身体に吸い込まれるようにまとわりつく


まず現れたのは、銀の胸当てと黒革の手袋、そして脚甲付きのブーツ

戦士風の装いは、たしかに力強く見えるだが、少し動きづらい


「……少々、重厚すぎますね」


次に試したのは、漆黒に金の刺繍をあしらった礼装服

肩まで覆うマント付きで、見栄えは良いまるで魔王のような風格


「これはこれで……ロマンがありますが街に入る前に追い出されそうですね」


軽く苦笑しながら、さらにもう一着、イメージを練り直す


私はもう一度、想像を研ぎ澄ませた

威圧的な風格と影のように美しく闇を感じさせる、強者の存在を感じさせるような、そんな姿を…


「黒き孤影よ、夜を纏いし影となれ、我が身を包み、威厳と栄光を授けよ 我が背を包み、闇を纏わせ、夜風と共に歩む者の装、今ここに具現せよ、幻想衣装創造クローク・ファンタズマ


風が巻き起こり、足元に黒き布の魔力が集う

それは緩やかに、だが確実に形を成していく


まず現れたのは、漆黒のロングコート

深々とした闇色を湛え、風に揺れるたび静かな存在感を放つ

裾には銀糸の細かな刺繍が入り、左右非対称に刻まれた古代文字が、ただの装飾以上の力を秘めているように見える


インナーには、光を吸い込むような黒のシャツ


伸縮性と防御性を兼ね備えた戦闘服でありながら、無駄なラインは一切ない

首元には薄く銀の糸で“逆十字”の紋様が刺繍されていた

それはかつて、私が中学時代に考案した「影の騎士団」の紋章だ


肩口には光沢を抑えた黒金の留め飾り

胸元には控えめな装飾が施され、全体に静かな高貴さが漂う


そして、最後に現れたのは黒の手袋


掌の中央には赤黒い魔法陣の文様が浮かび上がり、詠唱時には微かに輝く


「では、街へ向かいましょうか、どんな出会いが待っているのか……楽しみです」


私はコートの裾を翻し、歩き出した

風を受け、黒衣が舞い上がる

この姿は、私が過去に夢見た“黒の魔導騎士”——クロウ・ナイトレイヴン


今その名が、遂に歩み始めた

またよんでね!

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