第8話 ゴールデンウィーク!
「これ、遠足のお土産のキーホルダー」
「わあありがとう。あんま嬉しくない」
「ククク! もらっても微妙に反応に困る珍妙なお土産こそご当地土産の真骨頂! 捨てるに捨てられず、机の引き出しの隅にそっとしまっておいて、数年後に発掘された時になんとも言えない懐かしさを味わいがいい! それとこっちは山の名前が焼き印された饅頭ね」
「わあいありがとう! すっごく嬉しい!」
「ふゆきっちゃん饅頭好きなの?」
「大好き! どこの観光地でも似たようなのが売ってる日本全国どこでも大差ない味の温泉饅頭とか大好物!」
「こっちは蜜柑に。山の泥で作った天然泥パックだって」
「オタクに美容グッズ贈るとか舐めとるかーい! ありがたく使わせて頂きますけれども!」
「え? 黒崎ちゃんパックとかするんだ?」
「なんか意外。てっきり化粧品全般を親の仇みたいに憎んでると思ってたのに」
「しますが!?」
「えっへっへー! 俺からのお土産はねー! なんと! 山の貴重な天然水! 500mlなのに1本700円もする貴重品だあ!」
「たっか!? 遊園地だって400円ぐらいなのに!」
「単発ガチャ2回分と考えればまあ……それでも高いな? アニメラベルのオタク水といい勝負では?」
遠足も終わりもうすぐゴールデンウィークが始まる。ぼちぼち5月病にかかってくる生徒もいるかもしれないけど私たちには今のところ無縁だ。
「ゴールデンウィークはどうする? 折角だからみんなでどっか遊び行く?」
「つっても毎日学校で顔合わせてるからなあ。放課後も普通に遊び行ってるし」
「そもそも連休中はどこ行っても混むでしょ絶対」
「拙者絶対に外せない同人イベントの予定が」
「あ、あれ行くんだ。私は行かない予定だったけど、蜜柑が行くなら私も行こうかな」
「友達と同人イベント参戦だなんてそんな!?」
「俺もついてっていーい?」
「女性参加者ばかりで行列待機中や会場内で死ぬほど肩身の狭い気まずい思いをする羽目になってもよければどうぞ」
「やっぱやめとく!」
「大丈夫だよ。今時腐男子なんて珍しいもんじゃないし」
「浦部氏の見た目だと完全にガチ系の人だと思われそうですがなフヒヒ!」
そんなわけでゴールデンウィークはみんなで新作のアニメ映画を観る以外は特に予定がなかった。真凛がずっと好きなご長寿アニメの劇場版シリーズで、私も子供の頃から付き合いで何本か観てる。どうやら黒崎さんも好きらしいし、浦部くんも子供の頃観てたらしい。
「泣いた」
「感動した」
「面白かったな!」
「うん」
アニメ映画は普通に面白かった。私たちが生まれる前からやってる超長寿シリーズなので、子供向けだけど大人も普通に楽しめる。黒崎ちゃんは推しキャラが活躍してたことに猛烈に感激し、真凛も歩きながらSNSで感想を漁り始めた。
映画を観終わった後の真凛はしばらくSNSの感想漁り魔になるので、それが落ち着くまで待って、それから熱く感想を語り合う、というか一方的に真凛の感想を私が聴く羽目になるのも毎年の風物詩である。
「お昼どうする?」
「オムライスに1票」
「いいね、賛成!」
「そんじゃオムライス食いに行きますか!」
映画館のある大型ショッピングモールには大体なんでも揃ってる。そのままオムライス屋さんに移動して真凛と浦部くんが特大サイズのオムライスを前に大食い対決始めたりもしつつ、楽しい休日は過ぎていった。
「そんじゃお疲れー」
「また学校で!」
「お疲れっしたー」
夕方になり駅前で解散。夜遊びをしてもよかったのだが別に夜遊びじゃなくても普通に昼間遊べばいいだけだし。門限もあるし。
「あれ? 浦部くん?」
「へへ。晩飯に二幸のラーメン食おうかなと思ってさ」
「昼間あんだけ食べたのによく食べられるね!?」
「現役の運動部員を舐めちゃダメだぜ!」
繁華街からほんの数駅だが、ふたりで電車に乗ることになった。