第5話 浦部くんハブられる!?
「浦部がハブられたってマジ?」
「そうなんだよー! 俺なんかやっちゃったかなー!?」
「まあ、浦部氏のウザさでは時間の問題だった気もしますが」
「そんなにウザかった俺!?」
「男子高校生としては平均よりやや上ぐらいかな?」
「単に紅さんが性格悪いだけだから気にしなくていいと思う」
週明け突然それまで仲よくやってたクラスの1軍カースト軍団からそれとなく距離を置かれてしまい、涙ぐむ浦部くん。可哀想なので仲間に入れてやろう。女子3の男子1でハーレム状態だぞ喜べ。
真凛は可愛い系ギャルだし黒崎ちゃんも中身は同級生でナマモノ妄想始めるぐらい残念だけど外見だけなら学年一の美人だ。
「始まったね、紅のいつもの独裁政治が。爽やか面してるくせにちょっとでも気に食わないことがあるとそういうことする奴だから、気にしない方がいいと思うよ」
「わあ陰湿。これだからジョック軍団は」
「というか、私のせいだよね、ごめん」
私が頭を下げると、浦部くんはそんなことないって! と両手を振った。
「紅さんさあ、昔から私が友達作ろうとするとそうやって邪魔するんだよね。だからみんな私に近付くと紅さんに睨まれるーって逃げてっちゃう。唯一の例外は真凛ぐらい」
「え? てことは拙者もイジメの標的にされるんでござるか!?」
「私の傍にいれば大丈夫だよ。紅も昔っから私にだけは絶対に手出せないから」
「ほんと、いい迷惑。浦部くんもやりたくもない集団イジメに加担させられなくて済んでよかったじゃん。紅さんたちとは距離置いた方がいいよ絶対」
浦部くんがなんとも言えない顔になる。
「おや浦部氏、何か心当たりでも?」
「心当たり……ないわけじゃないけど! やっぱふゆきっちゃんちのラーメン食べに行った時のあれがよくなかったのかなー!?」
「浦部くんにはなんの落ち度もなかったと思うよ。猛烈にニンニク臭かったのは確かだけど、そんなん私だってうちのラーメン食べた後はそうなるし」
「あ、浦部氏ふゆきち氏のラーメン屋もう行ったんだ。どうだった?」
「マジで美味かった! また今度食べに行くけど黒崎ちゃんも一緒にどう?」
「つつしんで遠慮しとくでござる。浦部氏のことは嫌いじゃないけど拙者筋金入りのぼっち女なんで。行くなら独りで行く。なのでふゆきち氏も私が店に入っても親しげに声をかけないで頂きたい。店員に声かけられるとか拙者普通に死ぬんで。あくまで名もなき見知らぬ一般通過普通の客のつもりで対応ヨロ」
「同人イベントの帰りに打ち上げとか行かないの?」
「うっかり失言かまして嫌われるのがこわくてそういうのは行きたくないでござる!」
わざとおどけてくれたであろう黒崎さんにつられて笑った後、浦部くんはガックリと肩を落とした。
「本当にごめんね、私のせいで」
「いや、ふゆきっちゃんのせいじゃないよ」
「そうそう。悪いのは全部紅なんだから。幼馴染みなんだから余計なことしないで素直に二幸のこと守ってやりゃよかったのに。なんだって天邪鬼なんかねあの男は」
「それっていわゆる伝説の、みんなには優しいけど私にだけ何故か意地悪な彼くんという奴なのでは? まさか実在するとは思わなんだ」
「そういうのじゃないです。そもそも彼氏じゃないし、友達ですらないからね?」
「ポっと出の男がふゆきっちゃんとベタベタしてたのが紅っちの逆鱗に触れたんだろうなあ、たぶん」
「「それな」」
「いやいやいやいや! だからそういうのじゃないから!」
どうして紅さんが絡むとみんなこうも恋愛脳になるのだろう。少女漫画じゃないんだからさ。
「浦部くんも紅さんの顔色窺ってご機嫌取りしようとするの惨めだからやめた方がいいよ。別にいいじゃん無理に1軍にい続けなくても」
「うう! 俺のバラ色の青春が」
「そもそもバラ色の青春ってなんなの? どうすればバラ色になるの?」
「そりゃあ、友達沢山作って可愛い彼女も作って、部活でも大活躍して一生思い出に残るような楽しい毎日を」
「それは別に紅の取り巻きにならなくてもできるじゃん」
「それはそうなんだけど!」
「そんな落ち込まなくて大丈夫だよ! 友達なら私たちがなったげるから!」
「え? 俺らまだ友達じゃなかったん!?」
「え!? いや違!? 今のはそういう意味じゃなくて!」
「ふゆきち氏、今のは渾身ですぞ」
「真凛ー! 黒崎ちゃんがイジメるー!」
「はいはい」
浦部くんはますます落ち込んでしまったようだったが、『可愛い女子3人に囲まれてハーレムじゃん何か文句あんの?』という真凛の一言で立ち直ったらしい。単純なのはいいことだ。
『あいつ! 俺のふーちゃんに近寄るなって言ったのに! まだわかんねーのかよ!』
『なんかふゆきっちゃんは紅っちのこと好きじゃないみたいだし、そんなら別にいっか!』