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第13話 浦部くん後悔する!

「ふゆきっちゃん、これ」


「何? 猫のキーホルダー?」


「防犯ブザー。もしもの時は尻尾の部分引っ張れば大音量で鳴るから」


 後日、浦部くんが可愛い猫ちゃんの防犯ブザーをプレゼントしてくれた。波乱のゴールデンウィークももうすぐ終わり。学校が始まったらどんな顔してあいつと会えばいいんだろ。


 いや、何食わぬ顔でいいか。お互い何もなかったことにして、これからは関わり合いにならずに生きていく。少なくともそれが一番角が立たない方法だ。


「なんかあったらすぐ鳴らして」


「あ、ありがとう。なんかごめんね?」


「いいんだ。俺にできることがあればなんでも言ってくれよ。力になるからさ」


「……うん、ありがとう浦部くん」


「……あのさ」


「何?」


「ふゆきっちゃんが襲われたの、たぶん俺のせいだ」


「そんなことないよ」


「そんなことあるんだ実は」


 浦部くんは真剣な顔で私を見つめる。何? どしたん? 場所は昼時のファストフード店。店内はかなり混んでる。


「最初にふゆきっちゃんちのラーメン食べに行った時、俺紅に言われたんだよ。ふゆきっちゃんは俺のもんだから絶対手を出すなって」


「あいつ裏でそんなこと言ってたんだ」


 引くわ。


「ふゆきっちゃんは本気で嫌がってたと思うし、嫌いになって当然だと思うけど、あいつがふゆきっちゃんのこと好きなのだけはマジだったと思う。だから羽柴っち以外は周りのみんなもずっとあいつの味方してたんじゃないかな」


「だからお母さんもおばさんもまんまと騙されてたわけね。いや、騙してすらいないのか。好きの方向性が歪んでただけで、好きなのは本当だから」


 好きだからこそ相手を傷付けたい、苦しめたいってドSかよ。私はMじゃないんだぞ。


「俺、最低なんだ。ふゆきっちゃんが紅のこと嫌いだって知った瞬間、ざまあみろって思っちまった。勝手に俺のこと横恋慕野郎だと思い込んで、一方的な勘違いで俺のことクラスでハブろうとして」


「だからあてつけみたいに私や真凛のところに来たの?」


「最初はそんなつもりなかったよ。いきなりハブられて困惑してる俺に羽柴っちが声かけてくれて嬉しかったし」


「真凛はそういうとこほんとさとい子だからね」


「ふゆきっちゃんや黒崎っちが友達になってくれたのもすげー嬉しかった。だからテンション上がって、調子に乗っちまったのかも。もし俺がふゆきっちゃんと付き合うことになったら、紅はどんな顔するだろ、って」


「そりゃあ、やっぱキレるんじゃないの? 本気でずっと私に10年以上片想いしてたんなら、嫉妬に狂って……あ」


「そうなんだよ。俺が悪戯にあいつの嫉妬心を刺激しちまったせいで、ふゆきっちゃん……服部さんが襲われたんだと思う。本当にごめん」


 浦部くんが深々と頭を下げる。なんなら土下座でもしそうな勢いだ。混雑してるファストフード店でやられても困るからやらないんだろうけど。


『俺、ゆるせねえよ。紅の野郎は勿論だけど、紅より自分がゆるせねえ!』


 あの時浦部くんが本気で憤慨してたのは、これのせいだったのか。酷い話だ。


「ここまで来たら隠し事はなしで、お腹割って正直に答えてほしいんだけど」


「うん」


「私に気があるフリをしてたのは、そのせい?」


「全部が全部そうじゃない。服部さん可愛いし、優しいし。付き合えたらいいな、って思ってたのはほんと。だけど紅への対抗意識というか、意趣返しというか。そういう不純物が入り込んじまって、100パー純愛とは言えなくなっちまった」


「具体的に何パーセントぐらい?」


「最初は2、いや3割ぐらいだったかな、たぶん。7割本気で、でも、一緒に過ごしてるうちに、どんどんふ……服部さんのことが好きになってった。だから、余計紅の野郎には渡したくないなって思っちまって。ほんと、笑えねえよ。紅の野郎の魔の手から俺が君を守ってやりたい、なんて思い上がってさ。そのせいで一生のトラウマになるようなこわい思いを服部さんにさせちまった。自分のバカさ加減が本当に嫌になる」


 浦部くんは罪悪感に押し潰されそうな、というか押し潰された顔をしていた。死刑を宣告されるのを待ってる犯罪者みたいな神妙な顔だ。


「謝ってゆるされることじゃないけど、本当にごめん。俺、もう二度と服部さんたちに近寄らないから。もし俺に償えることがあれば、なんでもする。紅は確かに最低だったけど……俺もあいつと同じぐらい最低なんだ」

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