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第11話 ふゆきち大ピンチ!?

「何? 浦部とデートでもしてきたわけ?」


「真凛たちと4人で映画観てきただけですう。そもそも私が誰と遊びに行こうが紅さんには関係なくない?」


「関係あるよ」


「は? ないが?」


 露骨に不機嫌。露骨に怒ってる。怒ってるのはこっちなんですけど?


「もう小学生じゃないんだからさ。年頃の女の子の部屋に上がり込んでるってあり得なくない? プライバシーの侵害じゃない? 出てって!」


「あのさ。ふーちゃんは俺の気持ちなんか全然わかってくれないよね」


「いった!?」


 手首を掴まれ強引にベッドに押し倒される。そのまま両手首を掴まれてのしかかられたせいで身動きが取れん。は? マジでキモイ。何しとんのこいつ!?


「俺が普段どんだけ我慢してるかわかってる? これまでどれだけ我慢してきたと思ってんの? それなのにあてつけみたいに浦部なんかと」


「は? 浦部なんかって何よ浦部なんかって。浦部くんは紅さんなんかよりはるかにマシな人ですけど!?」


「ッ! だったら、自分がどれだけ残酷なことしてるかわからせてやるよ!」


 激昂した紅に強引に唇を奪われそうになったので、反射的に頭突きを繰り出してしまった。犯される!? という恐怖に一瞬身が竦みそうになったが、本当に竦んでしまったらそれこそおしまいだ! と体が硬直する寸前に渾身の頭突き、というか額突きを炸裂させる。


 鼻面に直撃したせいか鼻血が垂れ、怯んだ拍子に股間を蹴飛ばしてやれば、手首の拘束がわずかにゆるんだ。逃げないと!


「お父さあん! お母さあん!」


「は!? なんでだよ!? ねえふーちゃん、なんでこんな酷いことするの!?」


「酷いのはお前の方だろうが!」


 無我夢中で暴れ、手首の拘束が解けた拍子に私は悲鳴を上げながらベッドの傍の窓ガラスを力いっぱいバンバンバンバン! とぶっ叩いた。割るつもりだったのだがガラスって意外と頑丈だ。


「二幸!」


 幸い異変に気付いてくれたお父さんが1階から駆け付けてきてくれたお陰で事なきを得た。危なかった。ほんと何考えてんのこいつ!?


――


 当然だがお父さんによって叩き出された紅は我が家への出入り禁止令が出された。


「いきなりベッドに押し倒されて無理矢理キスされそうになった。力づくで押さえつけられて抵抗できなかった。本当に心の底から気持ち悪かったしこわかったし嫌だった。二度と顔も見たくない」


 本気で涙目になる娘を前に、さすがの母も今回ばかりは紅を擁護できなかったらしい。そもそも夫婦喧嘩の原因は、ゴールデンウィーク中紅がうちの店でバイトしたがったのを父が断ったからだそうだ。


『二幸が嫌がるからダメだ』


『そんなことないわよ。あの子は素直じゃないから照れてるだけで』


『ダメなものはダメだ』


 母がとりなそうとしても頑として断ったらしく、結果的に父の判断は正しかったことが証明された。紅が私の部屋にいたのは、母が私から父を説得させるためだったらしい。その結果があのザマである。


「次に二幸を泣かせたら警察を呼ぶぞ!」


「誤解ですおじさん! 俺はただふーちゃんのこと本当に愛してて!」


「愛する女性に性暴力をふるって泣かせるような男に二幸はやらん! 絶対にだ!」


 普段温厚で叱る時も静かに諭すタイプの父が珍しく声を荒げ、紅は我が家から永久追放された。ご近所さんの手前、うちの母と紅の母が友達同士なのもあって、今回だけは若気の至りということで警察には通報せず見逃してやることになったが、二度目はない。


 どうしてこうなった、と言わんばかりの表情を母が浮かべているが、そんなのこっちの方が訊きたいよ!

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