第10話 ふゆきちピンチ!?
横浜家系ラーメン二幸は駅から徒歩15分ぐらいのところにある。本当は駅前にあればよかったのだがちょっと遠い。でもそのお陰で駐車場が作れたので、車で食べに来てくれるお客さんもいることを考えるとよしあしだ。
「ただいまー、って」
店に戻ると何やら両親が揉めてるようなムードだった。もちろんお客さんの手前露骨にそれを表に出すことはないが、家族なので肌でわかる。
「お帰り二幸」
両親の視線が私の後ろの浦部くんに留まる。
「覚えてるでしょ? 同級生の浦部くん。また食べに来てくれたの」
「どもです! こんばんは!」
「ああ、いらっしゃい」
父は歓迎しているようだったが、母はそうでもないような雰囲気だ。とはいえさすがにそれは失礼だろう。私は率先して食券を買い、彼とテーブル席に着いた。
「折角来てくれたのにごめんね、なんか夫婦喧嘩でもしてるっぽい」
「そうみたいだね」
折角来てくれたのにこの空気の中ポツンと独りで置き去りにするのも悪いので、一緒にラーメンを食べることにした。ほんとはお昼ガッツリオムライスを食べたせいでそんなにお腹が空いてなかったのだが、さすがにね。
そそくさとラーメンを食べ、店の外まで見送りに出る。
「ほんとごめん! 折角食べに来てくれたのに!」
「いいよいいよ。人間そんな時もあるから気にしないで」
「ありがとう! あ、ちょっと待ってて!」
私は一旦店の奥に引っ込むと、トッピングのタダ券を3枚持って出てきた。1、2枚じゃ少なすぎるが、4、5枚だと来店を催促してるみたいなので、3枚がちょうどいいんじゃないかと思う。真凛と黒崎ちゃんがいれば一度に3枚使いきれるし。
「これ、トッピングのタダ券。よければお詫びに!」
「そんな気ぃ遣ってもらわなくていいのに。でもサンキューな。期限が切れないうちに使いに来るわ」
「うん。今日はありがとう。楽しかった。またね浦部くん!」
「またな、ふゆきっちゃん」
ヒラヒラと手を振って去っていく浦部くんを見送り、ため息をひとつ。何が原因か知らんが、営業中に夫婦喧嘩などしないで頂きたい。店を閉めてからやれ店を閉めてから。
両親がギスギスしてるところに戻りたくなかったので、店を迂回せず裏口から自宅に入る。部屋に戻ると何故か私の部屋に紅さんがいた。
「は!? ちょ!? なんでいるし!?」
「素子さんが部屋で待ってるようにって通してくれた」
「お母さん勝手に何してくれとん!? 年頃の乙女の部屋なんですけど!?」
確かに幼馴染みの腐れ縁ではあるが、だからってさすがにこれはない。我が母ながらドン引きである。というか、お前も少しは遠慮しろよ! 女子の部屋やぞ!
『は? なんで浦部と仲よく帰ってくんの? ねえふーちゃん、なんで? ていうか、ふーちゃんは俺の本命だから近付くなって言ったよね? 浦部の奴、死にたいの?』